むろととうずしお その8(海部の夜)

海部駅

最終の16時32分発のDMVに乗り、16時50分に海部に着いた。

今回の旅で一番苦労したのは宿である。最初に泊まろうと思ったのが牟岐であった。宿と夜の食事を両立し、かつ翌朝の「むろと」、厳密にいうと牟岐6時21分発の阿波海南行きの始発に乗り、折り返し6時44分発牟岐行き、変じて牟岐6時59分発の「むろと」に乗ることができるということで牟岐を候補にしたのだ。それにこの辺りでは一番大きな街でもある。でも、牟岐で考えていた宿は今はやっていなかった。おまけに宿の近くにある居酒屋も昨年12月末で閉店したとのことで、宿も飲みも完全に潰えてしまった。

続いては折り返し列車の始発となる阿波海南。ここも満室とかその日はやっていないとかで断念。駅の近くに焼き鳥の店なんかがあって期待していたのだが、ちょっと焦りだした。

で、次に当たったのが海部であった。実は牟岐で取ろうとしていた宿へ電話をしたときに、うちはもう宿泊は取っていないんですが、と海部に数軒ある宿の電話番号を教えてくれたのだ。お礼を言って、そこへ電話をすると空いてますよとの返事。しかも、駅から近いという。だから、海部で降りたのだ。駅の内外を撮って、今晩の宿である民宿かいふへ向かう。

民宿かいふ
民宿かいふ

海部駅から東へ1分足らずで国道55号に出る。これを渡って、旧道っぽい細い道に入るとすぐ民宿かいふはあった。駅から3分くらいだろうか。国道沿いにはちょうどバス停もあり、交通の便がいい立地だ。泊ったのは多分、こちらの棟。

チェックインをして、きさくな女将さんに部屋へ案内される。2階への階段にはサーフボードが並んでいるので聞いてみるとサーファーがよく泊まりに来るという。部屋で風呂やトイレ、門限などの説明を受けた後、明日我々は朝が早く、6時には出たい旨を伝えると朝食の弁当をそれより早く持ってきてもらうようにするという。大変ありがたい話で、それではとお願いする。この宿にはお遍路さんも泊まるそうで、彼らは朝が早いから弁当屋さんにはいつも朝の6時に弁当を配達してもらっているそうだ。

相撲を見ながら休憩する。夕食の店は18時半に予約しているのだが、楠君は18時から開いているのなら18時でええやろと言う。予約の時間より早いけど、行ってみようかとなった。今は大相撲の初場所が開催されているところなので取組が終わってから行くことにした。

休憩の間に明日の朝どうするか相談する。始発のDMVか、タクシーを呼ぶか、歩くかの三択だけど、宿から阿波海南駅までは1.5キロしかないことが分かったので歩いて行くことにした。20分もあれば着くだろう。DMVでは接続時間が数分しかなく慌ただしいのではじめから頭になかった。

すっかり暗くなって宿を出る。月がきれいだ。お店へ行く前に2次会用のコップやら皿やら箸やらを買いに宿近くのスーパーへ寄る。それからお店へ行ったので結局18時半を過ぎていた。

ごち

歩いて数分で着いた店は「ごち」という居酒屋だ。人気のない街に灯る赤ちょうちんがたまらない。

おすすめ

店頭に立つ信楽焼の狸がおすすめを持ってお出迎え。すみません、ブレてしまいました。ここにあるものだけでも満足するラインナップだ。

ショーケース

18時半に予約した者ですが、と断って店に入ると正面のカウンター席をあてがわれる。店内には昭和50年代の昭和歌謡が流れ、つい口ずさみたくなる。そして、ショーケースには様々な魚が並ぶ。

メニュー

メニュー。徳島の地鶏・阿波尾鳥に阿波和牛。

寿司もある。

メニュー

全部頼みたい。

メニュー

こちらは居酒屋でよく見る一品料理。でも、中にはいいなと思うのもある。目移りしていけない。

突き出しはいわしの煮付け

では、スタート。突き出しはいわしの煮付け。

阿波尾鳥の白きも

まずは生ビールで乾杯をして阿波尾鳥の白きもと

阿波尾鳥のねぎま

ねぎまと

阿波尾鳥のつくね

つくねでスタート。

提灯
提灯

カウンターの上には魚貝の書かれた提灯が並んでいる。どれも食べたい。あとから地元の常連客らしい何人かが小上がりに通されていた。居心地がいいので常連さんも多いことだろう。長居がしたくなるそんな雰囲気の店だ。

日本酒 南

ビールと焼き鳥を終えると日本酒にスイッチ。最初に頼んだのは高知の南の冷。これは四国酒まつりで初めて飲んで以来好きになった。福井の黒龍もあり、これは昨夏敦賀で飲んで気に入ったので、続けて頼む。

あまべ牡蠣

これはあまべ牡蠣。

海部川をはじめとする河川から養分が運ばれ、細長い那佐湾に流れてくる。そこで育てられた牡蠣があまべ牡蠣という。那佐湾は先ほどDMVの車窓から見て来たとおり、深く入り組んだ湾なので大変きれいなのだが、それゆえにプランクトンなどの栄養分が少なく、牡蠣の養殖には不向きであった。そこで一つ一つの稚貝をバラバラに育てる、シングルシードという生産方法を用いることで養殖化に成功した。また、きれいな海だから水揚げした時の菌の保有数は基準を下回っており、その上にフジツボなどの貝が付着するのを防いで菌が繁殖しないよう努めている。出荷する前にはきれいな海水をさらに滅菌消毒し、その海水であまべ牡蠣を長い時間かけ流してから出荷するという徹底ぶりで生食にも適した牡蠣を供している。ちなみに「あまべ」とは昔、朝廷に水産物を献上していた地域にだけ許された地名とのことだ。なんと格式高い牡蠣であろうか。

今回は焼牡蠣で、さっぱりした味わいで美味しかった。そういえば、殻にはほとんど付着物はなかった。

アワビの刺身

アワビの刺身はコリコリしている。

刺身の盛り合わせ

刺身の盛り合わせ。カツオ、タコ、タイ、メジナの4種。どれも新鮮。

土佐鶴生

土佐鶴の瓶。日本酒の品ぞろえもよく、どれも美味しかった。

伊勢海老の刺身

伊勢海老の刺身。この海老はまだ生きていた。なかなかの筋肉質で、跳ね返るような弾力だった。

伊勢海老の味噌汁

最後の締めに伊勢海老の味噌汁。味噌と伊勢海老から出る出汁が相まってなんとも深みある味であった。お酒を飲んだ体全体に染み込むような、そしてほっこりする味噌汁だ。最後にこれを選んでよかったと思う。

大変いいものをいただいて21時過ぎに店を後にする。これはまた来たいお店だ。

鳴門鯛純米大吟醸

そして、宿に帰って来て2次会だ。朝のあるでよ徳島で買った鳴門鯛の純米大吟醸。宿を出る前に撮ったのでバックで相撲中継が映っている。

れんこんチップス

これもあるでよ徳島で買ったれんこんチップス。徳島県は蓮根の出荷量全国第3位を誇る。高徳線で池谷付近を走っていると線路の両側に蓮根畑が広がっているのを見たことがある人も多いだろう。

ちくわと天ぷら

これは〇産蒲鉾で買ったちくわと天ぷら。小松島といえば、やっぱりちくわだ。

2次会

最後に海の駅東洋町で買った高知の地ビールとマグロとカツオの缶詰。これらで0時くらいまで飲み食いして床に就いた。

海部は侮れない。今回はこんなところで。