令和6年大相撲秋場所 まとめ

敦賀旅を楽しみにしていた方には申し訳ございませんが、相撲記事の割り込みです。

秋場所が終わりました。今場所はいつもとちょっと違った盛り上がりを見せたように思う。では、さっそく見ていこう。

横綱・照ノ富士は腰やら糖尿病やらで出場できず、来場所もあるいは無理なのかもしれない。出てくるときはちゃんと相撲が取れる状態で戻ってきてほしい。

大関陣は実に情けない。琴櫻、豊昇龍ともに8勝とはどういうことなのか?並み居るドングリの先頭に立っているに過ぎず、ドングリはやっぱりドングリということなのか。それならそういう目で見ないといけない。今場所は優勝争いにはほぼ絡めなかった。近年は優勝予想で大関の名が挙がることはなく、今後も照ノ富士が休場すれば大関じゃない誰かが優勝すると思ったほうがよさそうだ。豊昇龍は以前から安定感のなさを指摘しているからあまり気にならないけど、琴櫻まで付き合う必要はない。なのに、今場所は相撲が小さくなったのか、かといって慎重に取っていたようにも見えず、何をしたかったのかいまいち分からないまま場所が終わった印象だ。今度大関になる大の里には怪我なく、彼らに毒されずにさっさと横綱に上がってほしいと切に願っている。

関脇は4人いたけど、明暗が分かれた。

まずは大の里の大関昇進だろう。何しろ安定感が抜群だった。それに基本に忠実で、先場所負けた相手に負けなかったという修正能力の高さも光った。右差しでも十分だけど、左のおっつけが強烈で相手は何もできない。技能賞、敢闘賞受賞は当然だろう。今場所、彼を止められたのは若隆景だけといっていい。あの体格差で打っちゃり気味に体を入れ替えて寄り切るあたりはさすが強靭な足腰を持つだけの事はある。もう一人、大の里に土をつけている阿炎は立ち合いもろ手突きで体を起こしておいてのいなしで大の里を土俵に這わせた。これもまた阿炎の得意であるが、圧力がないとあのいなしは相手を呼び込むだけで効果がない。決まるということは圧力が勝ったということだ。立ち合いの変化は褒められないが、いなしは引きと違って相手の攻めをかわして自分有利に持ち込む戦術だ。

霧島は復活の予感がする。今場所は12勝を挙げて大関復帰へ向けて再スタートを切ったように見える。10日目の大の里戦での立ち合いの変化は自信のなさの表れなのか、期待を大きく裏切った。でも、翌日からは厳しい相撲を取って優勝次点の成績で場所を終えた。先場所10勝していれば即大関復帰だったが、8勝止まりでなんとか関脇に踏み留まり、今場所も同じ感じかなと思っていた。それが今場所は12勝と徐々に調子を戻してきている。来場所、13勝以上の優勝でもすれば大関に戻れるかもしれない。が、やはり順当にやってあと2場所はかかるだろう。陥落場所を10勝で即大関復帰の特例を使わずに大関に戻ったのは魁傑、照ノ富士だけ。それに続く3人目になれるか?大関昇進前後の力強さが戻っているので、つい期待してしまう。

もう2人。まず貴景勝の引退だ。これはもう仕方がない。首を痛めてから本来の相撲が取れなくなった。頭から当たれないからそこから突き放しての突っ張りも威力が弱く、足もあまり出ていなかった。ここ1、2年はそんな相撲ばかり続いていた。1年前、去年の秋場所が最後の優勝となった。でも、最高位が大関で優勝4回は魁皇の5回に次ぐ記録で、満身創痍の中にあって立派な成績だ。首の怪我となると力士以前に生命に関わることになるので、残念だけど、引退はやむを得ないことだと思う。まずはゆっくりして治療に専念してほしい。

それから阿炎。先場所は8勝と勝ち越して、今場所もと思っていたらまさかの5勝に終わる。中盤に7連敗したのが痛かった。12日目に豊昇龍、千秋楽は大の里に土を付けるなど終盤は本来の相撲で持ち直して3勝を挙げてなんとか5勝。幕内上位には残れるものと思われるので出直しだ。

小結は東の大栄翔が8勝、西の平戸海は7勝だった。大栄翔は突き押しがよく、13日目に勝ち越したけど、あとは連敗して2桁勝てなかった。残念だったのは平戸海。いつもどおり、真っ向勝負で挑んだ。ただ、相手の攻めを堪え切れず諦めて引いてしまう相撲が何番かあり、それで負けたのがいくつかあった。10日目で6勝したので、今場所もいけるかと思っていたのに終盤に4連敗して負け越し、千秋楽に勝ってなんとか1点の負け越しに留めた。こちらも筆頭辺りの降下で収まるものと思われる。

平幕上位は負け越しが多い中、西2枚目・王鵬9勝、西3枚目・若元春11勝、東4枚目・正代10勝と3人が勝ち越した。しかも、3人とも持ち味を発揮していて内容がよかった。私は新入幕以来王鵬を素質を活かし切れていない「残念」な力士の一人に挙げていたが、ここ数場所は攻めが厳しくなり、徐々に力を付けてきているなと見ていた。今場所は自己最高位で上位総当たりだったにも関わらず、大関2人を破るなど9勝したのは大きい。若元春はこの2場所、怪我の影響もあって調子が上がらず、負け越しが続いたが、今場所は本来のおっつけや左四つの相撲で終盤を6連勝で締めた。正代は踏み込みが鋭く、前へ出る厳しい相撲で星を重ねた。

来場所の三役の空きは関脇1小結1もしくは小結2と思われるので、3人のうちに2人が三役に上がることになる。さて、誰を上げるのだろうか?あと、負け越した力士の中では東2枚目の熱海富士がまたしても7勝止まりで三役を逃した。ここ1年くらいもどかしい場所が続いている。東西の筆頭の隆の勝と翔猿は2桁敗で出直し。上位のメンバーがガラッと変わりそうだ。

ちなみに大関2人撃破は東5枚目の宇良も同じだけど、今場所の大関に勝っても評価が低いのか、ともに殊勲賞受賞には至らなかった。その宇良は押し相撲がよく、下からの攻めも効いて9勝。最後の2日を連敗して2桁勝利は逃したが、いい相撲が多かった。

私が期待している西5枚目の湘南乃海は3勝、西6枚目の豪ノ山は6勝とともに負け越し。2人とも上位で取ってほしいと思っているだけになかなか定着できないのを見ているとまだ通用しないのかなと思ったりする。みんな通ってきた道だからいずれ壁を破れるだろう。

中位はなんといっても東7枚目の若隆景だろう。今場所は大の里を破ったことで殊勲賞を受賞。幕内復帰2場所目で連続2桁、今場所は自己最多タイ、優勝したときに並ぶ12勝を挙げた。この地位で、しかも若隆景の力なら当然かもしれないけど、怪我から復帰して戻っている最中なので、確かめながら慣らし運転の面もあるかもしれない。が、もう関脇時代の相撲にほぼ戻っているといっていいだろう。星勘定でいうと来場所三役復帰がなくもないけど、多分筆頭か2枚目あたりになるだろう。いずれにせよ、上位総当たりの地位になるので楽しみだ。

西7枚目の美ノ海も実は連続10勝とこちらも来場所は上位総当たりに地位に上がりそう。入幕6場所目だったけど、ここまで勝ち越し、負け越しを繰り返し、平幕2桁の地位を行ったり来たりだった。幕内の土俵に慣れたのか連続2桁を挙げた。自分の得意になれるようになったし、圧力も増している。5人目の沖縄県出身力士として地元の期待も大きいことだろう。

東10枚目・玉鷲、東11枚目の佐田の海はともに7勝8敗と惜しかった。どちらも持ち味を出していい相撲を取っていたが、千秋楽で敗れて及ばなかった。安閑としていられない地位なので1点でも勝ち越してほしかったけど、来場所の奮起に期待したい。

下位は東西の13枚目の北勝富士と錦木がよく頑張った。北勝富士は膝を痛めて11~13日の3日間休んだのに、再出場して残り2日をともに勝って勝ち越した。また、錦木も終盤まで優勝争いに絡んで11勝と大健闘だった。左を差して重い腰を活かした攻めで相手を圧倒した感じだった。敢闘賞は納得だ。

西15枚目の宝富士が久しぶりの2桁10勝を挙げた。左差しの相撲はもとより、今場所は圧力が強く相手を引かせる相撲が多かった。これで番付の真ん中あたりまで戻れるといい。あと、今場所は青森出身幕内力士の連続在位が途切れるのではと危惧されていたが、幕尻の東17枚目・錦富士ともども勝ち越せたのも嬉しい。

長々と書きましたが、今場所もたいへん面白かった。さて、来場所はどうなるだろう。大銀杏が結えるか結えないかのスピード出世の新大関も誕生しそうだし、大いに楽しみだ。

今回はこんなところで。