令和5年大相撲名古屋場所 新番付

7月8日から名古屋場所が始まる。その新番付が発表された。それを見てみよう。

横綱は先場所、7場所ぶり8度目の優勝をした照ノ富士で、一人横綱は11場所目。もう2年近くになる。先場所の序盤こそバタバタしたが、中盤以降は安定感ある相撲を見せた。今場所も膝の状態次第だけど、何も名なければ優勝の最右翼だろう。

大関は何といっても新大関・霧馬山改め霧島だろう。なんといっても、一発で決めたのが素晴らしい。足腰の強さを活かして、拝む相撲をみがけば、名人横綱誕生も夢ではない。その霧島は今場所は西に回った。一方、先輩大関の貴景勝は若元春に変化で勝ち越すなどどうも印象がよくない。調子が悪いと変化や引き技を繰り出すのは悪い癖で、こんな相撲は貴景勝の相撲ではない。首も痛めているから頭から当たれないのもあるのだろう。頭から当たれないとそのあとの突っ張りはもちろん引き技も効き目が薄い。満身創痍でも先輩だから番付では格上の東に置かれている。

ともあれ、これで4場所ぶりに東西に大関が置かれ、照ノ富士が大関を兼務する「横綱大関」も解消となった。もっとも、この間照ノ富士が出場したのは先場所だけだったので、横綱大関・照ノ富士を見られたのはひと場所だけに終わった。でも、テレビでは「横綱」表記なので、横綱大関という地位を見たい方は番付表を出に入れるといい。ちゃんと「横綱大関」と書かれている。

関脇は東・豊昇龍、西・大栄翔、西2・若元春となった。先場所は霧馬山と合わせて4人の関脇が全員10勝以上し、この3人は春場所も2桁勝っているので、そろって大関獲りの場所となる。3人のここ2場所の成績は豊昇龍21勝、大栄翔22勝、若元春21勝とほぼ互角。いずれも11~12勝が必要となる。上にも下にも実力者が名を連ねる上位陣にあって、この成績を残すのは至難の業だ。NHKの解説の舞の海さんが先場所しきりに3大関同時誕生と言っていたけど、それは横綱、大関を差し置いて関脇3人で優勝を争うくらいのレベルでないと無理だろう。

小結は東・琴ノ若、西・阿炎となった。琴ノ若は上位に定着しつつあるけど、上位ではまだ2桁勝ち星がない。9勝は挙げるのにもう一つが遠い。なぜか毎場所のようにどこかで3連敗以上を喫している。先場所など5連敗がある。これで2桁勝つのは厳しい。大きくて柔らかく、力強さもあるが勝ち切れない相撲もある。もう一枚殻を破れば、さらに上を目指せそうだ。阿炎は去年の九州で優勝してからずっと勝ち越しを続けて、小結まで戻ってきた。10勝くらいしそうだけど、肘にはサポーターを巻いているので、なかなか突っ張り切れないのだろう。そうなると、引きやはたきに頼ってしまう。それで墓穴を掘ることもある。が、調子が良ければ、突き押しで一気に決めたり、その圧力を活かした引き技で勝ったりと変幻自在だ。また、土俵を丸く使うのもうまく、それで勝ちを拾うこともあるから、見ていて面白い相撲を取る印象だ。この2人が3関脇の脅威になると場所が面白くなる。

そろそろ、関脇小結は東西各1人ずつに落ち着いてくるのかな?

次は平幕。

上位は東筆頭の錦木が自己最高位。先場所は粘り強い相撲で1勝6敗からの8連勝で9勝。貴景勝、若元春、琴ノ若に勝ち、元大関の正代、御嶽海にも勝った。あの重い腰は上位陣にとっては怖い存在だ。東西の2枚目にはその元大関の正代が東、御嶽海は西に座る。御嶽海は新大関だった去年の春以来の勝ち越しで意気上がる。正代も負け越しはしたけど、よく前へ出ていたし、相撲はけっして悪くはなかった。体調さえよければ、場所を引っ掻き回すかもしれない。西3枚目の明生は終盤戦で上位と当たらされたことで8勝止まりとなったが、久しぶりに三役復帰が見える地位に上がってきた。東4枚目の朝乃山は右四つ左上手の形にすんなりなれるとは思えないけど、そうであっても慌てず相撲を取ることができるかどうか、今場所は今後を占う試金石となりそう。ここで2桁勝てれば、期待できるかもしれない。あと、東5枚目の平戸海がついに上位戦の圏内に上がってきた。固太りのごつそうな体格、正攻法の攻め、これらが通用するか楽しみだ。

中位を見るとこれも面白そうな面々が並ぶ。東西の6枚目は北青鵬と王鵬の若手がそろう。北青鵬は先場所8勝2敗から終盤5連敗を喫した。関脇と3日連続当たったので仕方のないこととはいえ、最後の2日は王鵬と輝だったから勝ってもおかしくなかった。が、この5連敗に弱点が凝縮されていると私は思っている。あの体格を活かして、序盤戦は棒立ち半身の体勢でも相手の攻めを物ともしなかったが、後半上位と当たるとそうはいかなかった。横から攻められ、霧馬山や王鵬には外掛けを喰い、豊昇龍には送り出されている。体格のよく似た輝には押し出されている。まともに攻められたのは若元春戦だったけど、最後は打っ棄りで敗れている。これは長身ゆえの腰が高さが災いしたということだ。西の王鵬は前半戦は引く相撲が目立ったけど、後半になるにつれて前へ出る相撲が増えて11勝を挙げた勢いで自己最高位とした。西8枚目・錦富士、東10枚目・金峰山はまだ上位の壁が厚そうだ。一方で中堅ベテランもそろい、これを老壮青というのかどうか分からないけど、実力者ぞろいであることは間違いないので、目が離せない。

下位に目をやると、新入幕が3人いる。東13枚目・豪ノ山、西14枚目・湘南乃海、西17枚目・落合改め伯桜鵬となっている。豪ノ山は元大関豪栄道の武隈親方が育てた初の関取で、滅多に見ない十両の土俵でいい攻めをしたのをときどき見ていて、師匠と同じ地位までいってほしいと思っている。湘南乃海はレゲエグループの湘南乃風を連想してしまうが、なかなか力のある力士のようだ。十両を3場所で通過するあたり、その片鱗がうかがえる。さらにすごいのが伯桜鵬で、今年の初場所で幕下15枚目格でデビューすると、いきなり7戦全勝で優勝して十両へ。そこで10勝、14勝(優勝同点)を挙げ、所要3場所での新入幕である。これは遠藤と並ぶスピード記録だ。まだ髷すら結えないのが初々しいけど、どれだけ強くなるのか楽しみだ。名古屋では髷が結えるのだろうか?髷の結えない結えない幕内力士となると、2003年(平成15年)の御嶽海以来となる。西12枚目の若隆景は今場所も休みましょう。じっくり治して、完治はしないまでも今までに近い相撲が取れるようになるまでは焦らず治療に専念することだ。これは東16枚目の遠藤も同じだ。休めばともに十両に落ちるけど、無理に出てまた怪我をしたり、元のところを悪化させたのでは元も子もない。あと、気になるのは西15枚目・宝富士と東17枚目の碧山の2人のベテランだ。7勝で何とか幕内残留、6勝だと十両落ちも覚悟しなければならない地位まで落ちてしまった。若手がひしめくこの地位だけに勝ち越すのは容易ではないと思うけど、頑張ってほしい。

今場所も照ノ富士を中心に展開していくと思うけど、大関獲りの3人も気を引き締めて臨むだろうから、場所がどう動くか。関脇3人には誰一人優勝争いから脱落してほしくない。仮に優勝争いから後退しても最低10勝はして来場所以降に望みをつなげてほしい。他の若手も負けじと付いていければ盛り上がるに違いない。

今回はこんなところで。