令和7年大相撲名古屋場所 新番付
7月13日から大相撲名古屋場所が始まる。
新横綱・大の里と新しい会場となるIGアリーナのデビューの場所となる。また、東西に横綱が名を連ねるのは2021(令和3)秋場所以来4年ぶりのことで否が応でも盛り上がる。その一方で大関は琴櫻一人となるため、大の里が西大関も兼ねる横綱大関となる。横綱大関が置かれるのは2023(令和5)年夏以来2年ぶりだ。華やかになったのか微妙な番付だけど、珍しくはある。
その新横綱の大の里、大関を4場所で通過したわけだが、場所を経るごとに地位に慣れてきたのか、安定感が増してきているようだ。先場所は千秋楽こそ横綱豊昇龍に敗れはしたが、14勝での優勝は文句なしだ。右四つ左上手を引けば盤石。まわしが引けなくても腰を低くして前へ攻めるのがいい。大きな体格を考えて余計重心を低くしているのかと思うほどだ。ただ、気になるのは豊昇龍に分が悪いことだ。いつも同じ負け方をしている。寄って出ると、その勢いを利用しての投げに屈することが多いのだ。まわしを取らずに攻め急ぐからそうなる。上手を引いて挟み込めば体格で劣る豊昇龍は身動きが取れない。が、豊昇龍もそうならないよう速く攻める。これからの取組が面白い。大の里で気になるのは、最初はつまづく傾向にあることだ。新三役、新大関と勝ち越しはしたけれど、なかなか自分の形になれず、苦戦していた。新横綱場所でもそうなのか?注目したい。
豊昇龍はというと、横綱2場所目の先場所はちゃんと皆勤して12勝を挙げ、千秋楽は大の里に勝ち、面目を保った。速い攻めはいつもながら目を見張るものがあるが、最近は投げに頼る相撲が再び増えてきているように見える。昨今の大型化にあって体格は小さいほうなので、千代の富士のような相撲を目指してはどうか。同じ投げるにしても相手の攻めを利用するのではなく、攻めながら投げれば余裕が生まれる。投げてもいいし、そのまま寄ってもいい。千代の富士も叔父さんの朝青龍もそうだった。最近では白鵬も上手投げが得意だった。これを身に付けると手が付けられない。今の勢いを利用する形だと体を寄せられたら終わりだ。
次に大関。琴櫻ひとりだが、現状は地位を守るのに精いっぱいといった感じだ。先場所も先々場所も勝ち越して以降は一つも勝てず8勝止まり。勝ち越して安心してもらっては困る地位なのだが、今の状況では横綱の対抗馬になり得ない。どうも自信がないような相撲ばかり目につく。負けると目はうつろ、しょんぼりして花道を引き上げる姿はとても大関に見えない。体格が活かせていない、攻めがというより詰めが甘い。あっさり攻め込まれることもある。早く優勝したときの相撲を思い出してほしい。あの場所はとにかく前への相撲だった。それに落ち着いていた。今すぐに大関になれそうな力士がいない今、踏ん張ってほしいところだ。
関脇は久々の3人。そりゃ、そうでしょう。先場所、西小結で12勝と優勝次点だった若隆景が西関脇2に上がった。これは西に大関がいないことによる。今回ばかりはかたくなに2人というわけにはいかなかったようだ。それだけ若隆景の相撲はよかった。左差し、右おっつけがよく、怪我をする前の状態に戻っている。とはいえ、膝の怪我が完全に癒えたわけではないし、これからも付き合っていくことになるだろうから、強引な攻めは禁物だ。東・大栄翔、西・霧島とも2桁勝っているので、今場所は3人とも大関獲りの足固めの場所となる。誰も脱落せずにいってほしいものだ。いつまでもドングリの背比べは見たくない。
小結は珍しいことが起こった。東は欧勝馬が初の三役に座ったのは先場所東6枚目で10勝したので順当だが、西の小結に高安がいることだ。先場所の高安は先々場所に優勝同点の好成績で久しぶりに小結に戻ってきたものの、腰の具合がよくなかったらしく、わずか6勝に終わる。なのに、東から西へ移っただけで小結に据え置かれたのである。
番付上の様々な理由で負け越しても同じ地位に据え置かれることはよくあることだけど、それは7勝の場合に限られる。それが6勝なのに同じ地位に留まった。で、調べてみると、6勝でも同じ地位に留まる例は15日制になって以降、幕内、十両合わせて14例ある(八百長事件での大量引退やコロナ禍の特別措置は除く)。が、三役では初めてだ。今回の場合は幕内の筆頭から5枚目までで勝ち越し0というのが響いた。毎場所誰かは勝ち越して三役の穴を埋めるものだが、今回はそれがなかった。欧勝馬だって厳密にいえば5点の勝ち越しなので、三役には届かない星勘定だけど、そうもいっていられない。
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さて、その勝ち越しのいなかった平幕上位だが、東西の筆頭であった若元春、王鵬、それから東2枚目の阿炎の3人が7勝に終わり、だれも三役を射止めることができなかった。若元春は初日からの4連敗が、王鵬は4日目からの7連敗が響いた。中でも阿炎は7勝4敗からのまさかの4連敗で負け越し。これは相当悔しかったに違いない。で、この3人はどうなったのかというと、それぞれ半枚ずつ番付を落とした。持ち味を発揮して今場所は勝ち越してほしい。若元春が西に回り、空いた東の筆頭には新入幕から2場所連続2桁勝利の安青錦が座った。東9枚目の地位で11勝を挙げたわけだが、安青錦より上の地位の力士はそれに次ぐ10勝だった。そのあたりの塩梅が難しいところだが、彼らを差し置いて筆頭まで上がったのは三賞受賞と期待値が大きいからかもしれない。そういうことで、3枚目以下には幕内中位で勝ち越した力士たちが名を連ねる。中でも東3枚目の阿武克に期待したい。自己最高位で、ついに上位総当たりの地位まで上がってきた。東4枚目の伯桜鵬にも期待したいが、先場所の後半戦で上位とあたった相撲を見る限りではまだ力不足かなと思う。他の上位力士も先の3人と同じように負け越しの点数の割には降下幅は小さめだった。
中位は上で負け越した力士と下位で勝ち越した力士が混ざり合っている感じの顔ぶれ。西6枚目の豪ノ山は自己最高位だった西2枚目から番付を落とした。初日から役力士との対戦が続き、自分の相撲が取れなかった。が、この地位ではそうはならないと思うので、また上位に戻ってほしい。西7枚目の遠藤はすっかりベテランの域だが、先場所は相撲が終わる度に膝が痛いのか歩きにくそうにしている場面がよく見られた。そんな状況の中、9勝を挙げたのは立派だ。しかし、無理な相撲は取らないでほしい。どこか傷めていても包帯やサポーターはしない主義というが、それで勝てなければ意味がない。そうしてまで勝ちたくないということなのか、遠藤独自の美学なのか、それを貫いて勝てなくなったら辞めるということなのだろう。でも、あの左差し右前みつの相撲はまだまだ見ていたいから頑張ってほしい。東8枚目の佐田の海は久しぶりに10勝で西13枚目から躍進した。右でも左でも差せば速攻というのが気持ちいい。今場所もその相撲を見せてほしい。そして、念願の三役昇進を果たしてほしい。今38歳で40歳の玉鷲より年下だ、まだいける。そして、父の佐田の海に並んでほしい。東10枚目の熱海富士は先場所東12枚目まで落ちてちょっとだけ番付を戻した。こんな地位にいるような力士ではないと思うのだが、その地位でも8勝しかできなかった。もっと大勝ちして元の上位に戻るものとばかり思っていたから期待外れだった。熱海富士も琴櫻と同じで詰めが甘い。攻めているのに攻めきれず逆転を喰らったりする。そのあたりは改善されているのだろうか。期待しながら見よう。
下位は新入幕3人、再入幕2人の5人が入幕した。東西の14枚目に草野と藤ノ川、東17枚目に琴栄峰が入った。草野は去年の5月に幕下付出でデビューし、十両は2場所連続優勝で入幕を果たした。ちょんまげは結えるのか?何番かしか相撲を見ていないけど、大の里のように圧倒する相撲を取っているので楽しみだ。藤ノ川は先場所まで若碇だったのを入幕を機に改名した。この藤ノ川は柏戸と並んで伊勢ノ海部屋ゆかりの四股名で、先代は先日亡くなった服部祐兒さんが名乗っていた。私が中学高校の頃の力士で覚えている。それ以来だから38年ぶりの復活となり、期待が膨らむ。琴栄峰は今場所東15枚目の琴勝峰の弟だ。以前、何かのテレビで見たけど、顔はよく似ている。再入幕は西15枚目に英乃海、西16枚目に御嶽海となった。御嶽海はひと場所で戻ってきたが、英乃海はずいぶん久しぶりだ。なんと2022(令和4)年の初場所以来というから21場所ぶりの幕内復帰だ。弟の翔猿が長く上位で活躍するのとは大違いで、これを機に少しでも幕内で取ってほしい。
気になる力士を見てまいりました。もっと取り上げたい力士はいますが、紙幅の関係でこれで勘弁してください。横綱同士の優勝争い、見たいですね。長いこと見ていないから余計見たい。琴櫻の巻き返し、関脇3人の相撲、上位初挑戦の力士、新入幕力士がどのくらい幕で通用するのか…見どころはたくさんあるので非常に楽しみですね。
というわけで、今回はこんなところで。




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