令和5年大相撲初場所新番付

本当は先週出すべき記事だったのですが、今頃になってしまいました。場所が始まるまであと4日。何やってんだかって感じですね。

寂しいのか?賑やかなのか?というのが率直な感想だ。世代交代、時代の流れを思わせる。

横綱は照ノ富士、大関が貴景勝と1人ずつしかいないのがまず寂しい。これは明治31年(1898年)1月の横綱小錦、大関鳳凰以来というから125年ぶりの非常事態だ。でも、照ノ富士に昔日の強さはなく、今場所も休場でいいと思う。膝がよくなるまで休めばいい。となると、貴景勝に期待と責任がのしかかる。先場所は曲がりなりにも正代がいたけど、今場所は名実ともに一人大関、もし照ノ富士がいないとなると先場所以上のプレッシャーになるものと思われる。先場所はなんとか優勝決定戦まで持ち込んだけど、それより前半で負け過ぎる。この取りこぼしがなければ、もう少し楽に場所を乗り切れるのにと思う。

横綱は1人しかいなければ、東に置かれるけど、今場所の場合、貴景勝はバランスを取って西に回される。大関だって1人なら東になるはずなのにそこは横綱に合わせるしかないというのが辛い。

大関が貴景勝1人になったことで、照ノ富士が「横綱大関」となる。番付上もそう記載されている。これは大関という地位は東西必ず1人は置かなければならないという決まりがあり、大関が欠けたときは横綱がこれを兼務することになっているからだ。古来、相撲の世界では大関が最も強い力士であり、横綱は大関の中でも特に秀でた力士がなるものという習わしがあるから、当然の措置といえるだろう。今場所は横綱が1人だけど、横綱が複数いて大関不在なら横綱のうちの2人が横綱大関となる。その大関不在は昭和56年9月に例がある。今回の横綱大関は3年前の鶴竜以来になるのだが、大関が1人、もしくは不在になることは滅多にないので、大変珍しいことだ。それもこれも相次いで陥落した御嶽海と正代が不甲斐ないからだ。

こんな状況なので、本当に華がない。が、将来への胎動なのか、関脇小結は賑やかだ。最近の若手の活躍には目を見張るものがあり、東西1人ずつというのはさすがに無理があると気付いたのだろう、ここ数場所はそれぞれ3人以上置くようになっている。今場所は4関脇4小結の大盤振る舞いだ。

これは昭和37年5月以来。このときは横綱と大関も3人ずついたので、三役以上が14人。これでは勝ち越すのも大変だ。事実小結は全滅している。横綱は大鵬、柏戸、初代若乃花(出場せずに引退)。大関は北葉山、佐田の山、琴ヶ濱(全休)。関脇は若羽黒、栃ノ海、羽黒山(安念山)、栃光。小結は若秩父、出羽錦、豊國、豊山。思わず唸らずにはいられない面々ばかりだ。中でも36歳の出羽錦の名があるのは感慨深い。柏鵬はともに11勝と低調。優勝は栃ノ海、次点が栃光という春日野コンビで、場所後に同時大関昇進となる。

ちょっと脱線がすぎました。本題に戻りましょう。

関脇から。東・若隆景、西・豊昇龍、東2・高安、西2・正代となった。成績順でないので元からいた2人に高安と正代が後ろについた形だけど、先場所の若隆景の成績からすると東2が妥当だろう。2桁勝てなかったのは仕方がないにしても8勝はないだろう。一方の豊昇龍はよかった。これが続くかどうか。高安はなぜ勝ち切れない、というのが強い。あれだけ優勝が目の前まで来ているのに賜杯を抱けない、どれだけ悔しいか。何が足りないのか。これから力も落ちてくるのだし、優勝できないまま終わってしまいかねない。正代は御嶽海とゆっくり平幕で過ごしてください、としか言いようがない。2人ともあんな相撲で大関に復帰できるはずがない。これで十両に戻ってきた朝乃山を含めて元大関が5人。大関も大概だけど、それを推挙した協会も何をやっているのかと思う。そう思うと、特例を使わず、一から大関に復帰した魁傑はすごいの一言に尽きる。

続いて小結。東・霧馬山、西・琴ノ若、東2・明生、西2・若元春の4人。霧馬山はそろそろ関脇にあげてやってください。安定しているだけに余計そう思う。琴ノ若は念願の新三役。ずっと平幕上位に据え置かれていたから嬉しさもひとしおだろう。若元春は連続10勝でついに三役に上がってきた。兄弟三役は若貴以来約20年ぶりのこと。明生も怪我で下に落ちていたけど、久しぶりに戻ってきた。先場所は持ち味の突き押しのいい相撲が多かったから今場所にも期待がかかる。

平幕をみていこう。筆頭と2枚目は先場所三役にいた4人だ。この実力伯仲、裏を返せば、ドングリの背比べ状態では1点の負け越しでも三役の地位を守るのは厳しい。それが如実に表れたのが今場所の番付だ。東から西へも回してくれなかった。7勝の翔猿と大栄翔は1枚、6勝だった御嶽海と玉鷲は1枚半それぞれ降下した。そのあおりを喰らったのが先場所優勝した阿炎だ。西9枚目で12勝したのに東の3枚目に留まっている。9点の勝ち越しで6枚しか上がっていないからちょっとかわいそう。普段なら小結くらいにはなれていたはずの成績だ。西3枚目の翠富士と西4枚目の佐田の海はもっとかわいそうで、勝ち越したのに先場所と同じ地位に留め置かれている。錦富士と竜電も3点の勝ち越し(9勝)なのに1枚半の上昇に留まっているけど、上がるだけましなのか?これだけ上位がひしめき合っていると仕方のないことなのかもしれない。

あと、若手に期待したい。ずっと残念な力士と書いてきた王鵬が終盤まで優勝争いを演じた勢いを維持できるか。あのおっつけながら前へ出る相撲がよかった。厳しかったように見えた。これが毎場所できれば、上位はおろか三役、大関、横綱と上がっていけると思う。何せおじいさんが大鵬なので、どうしてもそういう目で見てしまう。大鵬ははじめから強かったから、もどかしく感じてしまう。それから平戸海。ちょっと差して出る相撲が速い。腰もちゃんと落としているから安定感もある。これから上位と当たる地位まで上がったときが楽しみだ。先場所新入幕で負け越して、十両に下がった熱海富士にも期待する。密着して前へ出る相撲はいいものがある。さっさと十両を卒業して幕に戻ってきてほしい。

東16枚目に宝富士の名前があったのは嬉しかった。先場所は東の8枚目で初日から10連敗したから幕内に残れるのかと心配したけど、後半を3勝2敗としてギリギリ残った。左差しの相撲を得意としながら肘を痛めて、その左が使えないから思うような相撲が取れない。サポーターが痛々しい。重かった腰も最近は簡単に土俵を割ることが目立ってきた。もう35歳、うまさだけで幕内で取るのも厳しくなってきているのかもしれない。宝富士より若い同じ部屋の照強は先場所東16枚目の地位で15戦全敗を喫し、十両へ落ちた。これは平成3年7月の板井以来の記録だ。勝ち気な照強のことだ、奮起してすぐ戻ってくるだろう。

と、書いてきましたが、今年は上位陣に注目だ。でも、大関昇進は当分ないと私はみている。それどころか、今年中に照ノ富士が引退するのではないかとすら考えている。そうなると、番付はますます寂しくなるばかりだ。それは避けてもらいたいところだけど、豊昇龍が先場所11勝したからといって今場所同じだけ勝てるとも限らない。先場所の若隆景がそうだったように、いかに続けて好成績を残すのが難しいかを物語っている。それに大関がこんな体たらく(安定感には欠けるけど、貴景勝のことではない)では協会もちょっとやそっとの成績では上げづらいのではないか。もうしばらくは場所ごとに優勝者が変わる状況が続くのではないか。時代の変わり目として見守るしかなさそうだ。

とにもかくにも来週の日曜、8日から初場所が始まる。楽しみにして待つことにしよう。今回はこんなところで。