令和5年大相撲九州場所 まとめ

2024年3月30日

11月26日、大相撲九州場所は大関霧島が13勝2敗で2度目の優勝を飾った。気になったところを見ていこう。

大関は霧島の安定感が光った。常に低い姿勢で前まわしを狙う相撲に終始した。前半で2敗したけど、後半は負けなしで久々の好成績での優勝とした。14日目の熱海富士との相星対決は格の違いを見せつけた。この際に見せた巻き替えの速さはさすがというほかない。この成績なら来場所綱獲りと言われても納得する。同程度の成績なら優勝同点でも横綱になるかもしれない。

貴景勝は最終的に2桁すら挙げることができなかった。千秋楽も霧島に落ち着いて捌かればったり前に落ちた。終盤は特に突きに威力がなく、14日目の大栄翔戦では一方的に突き出されていた。今場所は攻め切った相撲があまりみられなかった。これはスタミナ不足に他ならない。突き押しに威力がなければはたきやいなしが効くはずがない。首の不調もあって頭から当たるのが怖いというのもあっただろう。あと、立ち合いの変化はなかったのは先場所の決定戦での批判を気にしてのことだろうか。

豊昇龍は相変わらず派手な、強引な相撲で場内を沸かせた。11日目の朝乃山戦では朝乃山の上手投げに対して下手投げを打ち返して勝った。普通上手投げ有利なのにそれを腰に乗せて投げ返したのだから強靭なバネのなせる業だろう。ただ、派手で強引な分、いつも安定感に欠けている。見ていて面白いけど、敗れるときはもろい。5日目の豪ノ山戦での立ち合い、自分優位で立ちたいのはみんな同じではあるけど、呼吸を合わせるというもっとも大事な点を見失ってはいないか、看板力士であるはずの大関が若手に対して悪い見本を見せているようなものだ。先場所の貴景勝ともども猛省を促したい。模範たるべき立場ということをわきまえてほしい。

続いて関脇。大栄翔は今場所も突っ張りが冴えていた。が、残念ながら9勝に終わった。貴景勝のように変化やいなしがないから見ていて気持ちがいい。9勝のうち7番が突き押しでの勝利というのもそれを物語っている。西の若元春はどうしたことか、わずか6勝に終わった。左が差せてもまわしが引けない。だから、力が入らない。おっつけもいいけど、まわしを引かないことにはやはり攻めも弱くなる。今場所は初日から精彩を欠いていた。どうしたんだろうと思ったら右足首を痛めていたようだ。これでは踏み込めないし、踏ん張れない。体格が大きいほうでもないし、よく6勝できたというべきか。来場所は平幕からの出直しとなりそう。もう一人の関脇琴ノ若は関脇として初めての2桁11勝とした。霧島には敗れたものの、あとの2人の大関に勝ったのは自信になっただろう。踏み込みがよく、柔らかく懐が深い。相手の攻めに下がらなくなったし、攻めが速い。来場所の大関獲りをいう人もいるけど、まだ早い。大関云々は来場所2桁勝ってからその次の場所だろう。

小結。阿炎6勝、北勝富士5勝と、ともに負け越した。阿炎はもろ手がよく伸びていたけど、序盤の4連敗が響いたか。北勝富士は押し相撲なのに逆に押されて負けた相撲が多く4つもある。前に落ちた相撲が3つ、回り込まれて送り出されたのが3つとなかなか厳しい土俵であった。この成績では2人とも平幕に落ちるのは必至だ。

平幕を見ていこう。

まず上位から。初日から休場していた東筆頭の朝乃山がが中日から出場、全部勝てば勝ち越しではあったが、そんなに甘くはなく、それでも4勝を挙げた。全休していれば全敗扱いなので幕尻近くまで落ちていたところを真ん中付近に留めることができそうだ。これは大きい。もっとも、負けた相撲には課題の詰めを誤らなければ勝てたものもあっただけにその点は惜しいと思う。西筆頭の宇良は千秋楽に勝って勝ち越し、来場所の新三役に近づいた。初日から5連敗したのでこれはダメかなと思ったらそこから8勝2敗、終盤は4連勝で勝ち越しのだから何が起こるか分からない。7日目の琴ノ若戦では絶体絶命の場面で逆転のとったりで勝つ。また、千秋楽の北青鵬戦はもろ差しになったものの、抱え込まれて、これで上手を引かれると万事休すという場面でうまく離れてもろはずで押し出した。このとき北青鵬の体は浮き気味になっていた。考えた相撲を取るなと唸ったものだ。今場所技能賞は該当者なしだったけど、宇良にあげてもよかったのではないか。他には東3枚目の高安が10勝したので久々に三役に戻れそうだ。千秋楽の玉鷲戦で相手の自滅で手にした10勝目だが、初日の若元春戦で豪快に上手投げで勝ったかと思うと豊昇龍戦では小股掬いといった小技も繰り出すなど安定した15日間だった。東4枚目の豪ノ山は千秋楽、同じ7勝7敗同士で同時に入幕している湘南乃海との対決を制して今場所も勝ち越した。これで入幕から3場所連続の勝ち越しだ。今場所は初めての上位総当たりの地位で大関2人に勝っている。それも優勝している霧島に勝ったのは大きい。あの重そうな突き押しは魅力的だ。気になったのは東5枚目の阿武咲で、わずか3勝しかできなかった。この地位でこんなに大負けするような力士ではないはずだけど、どこか悪かったのだろう。よく前に落ちていた。

中位はやはり西8枚目の熱海富士だろう。14日目の霧島戦、千秋楽の琴ノ若戦と連敗して優勝の夢は逃したが、まだ将来がある。右を差して左で上手を引く「型」を持っているのがいい。しかも、あの体格で攻めが速いので相手はなかなか反撃しにくい。12日目の豊昇龍戦や13日目の高安戦はともに格上の相手に攻め込まれてからの逆転で、粘りもすごい。ただ、体のあちこちに貼られているテーピングが気になる。怪我が悪化しなければいいが。西9枚目の御嶽海は中盤の5連勝がものをいって勝ち越した。ただ、元大関がこの地位で8勝というのはいささか物足りない。肩とかまだ怪我は癒えていないのだろうか。東10枚目の竜電は大きな体ながら両前みつを狙う竜電らしい相撲で10勝を挙げた。13日目の琴ノ若戦はまさにそんな相撲だったし、中日の北青鵬戦は技ありの出し投げであった。その東7枚目の北青鵬、この地位ではまだ力不足なのか自分優位になっても勝ち切れない相撲が目立つ。横からや下からの攻めに苦戦している。上手を取れればがぜん有利になるものの、その上手を簡単に取らせてもらえない。このあたりは相手が一枚上手である。

下位は新入幕が4人とフレッシュな顔ぶれとなったが、西15枚目の美ノ海が9勝したほかは負け越してしまった。まる4年ぶりに幕内に戻ってきた東14枚目の友風も13日目に7勝としながら負け越し。本人はさぞ悔しかっただろう。3場所ぶりに再入幕した西14枚目の一山本は十両優勝した先場所の勢いそのままに11勝した。突き押しがよかった。威力がある分、引き落としも有効だった。来場所は真ん中あたりまで番付を戻しそうなので、今場所のように勝っていけば終盤に役力士と対戦するかもしれない。そうなると面白そうだ。阿炎とタイプが似ているので、相手も嫌がるだろう。気になっていた2人のうち、まず西12枚目の玉鷲は突き押しが冴えてこちらも9勝。千秋楽は高安をよく攻めたが、勢い余って自分から土俵から出ていってしまったのはご愛敬。2桁は逃したが、これで十分である。そして、もう1人、東13枚目の宝富士は初日から不調で10日目で3勝7敗となったときは十両陥落か?と思ったが、そこから3連勝。そのまま千秋楽も勝ちたかったが、正代に取り直しの末、敗れて6勝9敗に終わった。正代戦は土俵際、寄り立てた際に落ちたのだが、ここで渡し込んでいたらあるいは物言いも付かず勝っていたかもしれない。そうすれば7勝でさらに安心できたことだろう。6勝でも幕内には残れると思うので、来場所の奮起に期待したい。西13枚目の剣翔は左膝の怪我の影響か、序盤戦は4連敗と苦しい展開となったが、9日目から6連勝で9勝6敗で場所を終えた。13日目の錦木にうっちゃりで、14日目は御嶽海を吊り気味に寄り切りで勝った相撲はとても膝を痛めているようには見えなかった。

気になる力士を書いていった。来場所は年が変わって初場所。霧島の綱獲りは成就するのか、他の力士の巻き返しはあるのか、照ノ富士は出てくるのか興味は尽きない。そんな初場所に思いを馳せつつ、今場所のまとめを終わろうと思います。今回はこんなところで。