令和7年大相撲春場所 まとめ

2025年3月25日

新シリーズは明日からです。ごめんなさい。

大相撲春場所は23日に15日間の日程を終えた。荒れる春場所というにふさわしく最後まで平幕力士が優勝争いに絡んで、優勝したのは大関の大の里だった。思えば先場所の豊昇龍のような展開だった。上位陣がふがいなかったといえばそれまでだが、大の里が最後の砦でもあった。

新横綱・豊昇龍は先場所後に懸念していたことが現実になったということか。おまけに先場所の優勝決定戦で右肘を傷めたという。初日から右の肘に大きなサポーターだったり、テーピングが巻かれていたけど、そういうことだったのかと思った。万全でも盤石な相撲でないのにどこか傷めていれば、いくら横綱とはいえ、簡単に勝つことはできない。豊昇龍はよく投げを打つが、相手の勢いを利用した投げだけではなく、攻め込まれての強引な投げも少なくない。これは怪我の元だ。おじさんの朝青龍や白鵬、貴乃花、ちょっと古くなるけど、千代の富士などの伝家の宝刀は上手投げであった。それは組んで相手にまわしを許さず、自分十分な状況で打つから決まるし、余裕があった。豊昇の相撲は見ている分には派手で面白いけど、安定感に欠ける。これも前から言っていたことだ。よかった点を挙げるとすれば、変化をしなかったことか。横綱たるものそれだけはやってはいけないと考えているのかもしれない。

大関陣は大の里が優勝を果たし、上位の面目躍如となった。荒れはしたけど、下位に優勝をさらわれなくてよかった。負けた3つは若元春、高安、王鵬と侮れない相手ばかりとはいえ、誰も寄せ付けない強さはまだない。基本に忠実で腰もよく割れている。修正能力も長けている。が、大関昇進後の2場所など9勝、10勝と物足りなかった。特に右が差せないと泡を喰うというか落ち着かないというか、かつての稀勢の里が左が差せないとバタバタするのと同じだと思った。これは今場所かろうじて勝ち越した琴櫻にもいえることだ。自分得意になれないと自分のペースに持っていけいない。まだその意味では修正ができている大の里が頭一つ出ているのかもしれない。だが、大の里もまだ横綱には時期尚早だろう。来場所もし優勝しても12勝程度では連覇だといっても、もうひと場所見たほうがいいと思う。同じ轍を踏まないためにも。というと、豊昇龍が悪例のように聞こえるかもしれないけど、それは抜きにしても大の里はまだ早いような気がする。と言ってるそばから横審が来場所は綱取り場所との認識を示したらしい。東西に横綱を置きたいのは分かりますがね、地位が人を作るとも言いますがね、やっぱりまだ早い。一方の琴櫻、何とか13日目に勝ち越してあと全部勝てば2桁に乗るので少しは名誉挽回できるかと思ったら、勝ち越しに安心したのか全部負けて8勝止まり。先場所の自身のなさそうな相撲が今場所も続いていて、また元大関が生まれるのかなと思った。勝つときは必死さ、悲壮感が漂い、負けるときは踏み込みが甘く、だから、攻め込まれ、攻めても逆襲され、そしてあっさり土俵を割る、といった具合で場所を終えた感じがする。とりあえず、大関に残ることができたのだから奮起してほしい。

関脇は東の大栄翔が9勝、西の新関脇・王鵬は6勝だった。大栄翔は序盤、中盤はよかったのに後半星が延びなかった。特に13日目の新入幕・安青錦(あおにしき)や千秋楽の美ノ海(ちゅらのうみ)に負けたのは痛かった。先場所が11勝だっただけに今場所の9勝は来場所以降の大関取りは厳しくなった。全勝優勝くらいすれば協会も考えるかもしれない。いや、もし来場所大の里が横綱になり、大栄翔がある程度の成績を収めたら大関に上げて横綱と大関を東西に置くようにするかもしれない。西の王鵬は前半は振るわなかったが、後半につれて次第に自分の攻める相撲が取れるようになり、13日目の大の里戦では攻めを堪えて逆襲して勝つなど攻めの姿勢を貫いた。左差し、押しがよく出ていた。

小結は東・霧島が8勝、西・阿炎が6勝だった。霧島は勝つときは低い姿勢で頭を付けていいのだけど、負けるときは体格差で屈する相撲が目立った。先場所11勝した相撲があまり見られなかった。阿炎は初日に豊昇龍に勝って3連勝と好スタートを切った。しかし、中盤に5連敗したのが痛かった。今場所の阿炎はもろ手突きの腕がいつものように伸びなかったように見えた。2人ともちょっと残念だったなと。

平幕上位は東西の筆頭・若隆景と若元春がともに9勝と三役に戻れそうな成績を残した。若隆景は横綱大関には勝てず、初日から4連敗したけど、下位にあまり取りこぼさなかった。6連勝もあって9勝とした。若元春は大関2人に勝つなど順調に星を伸ばした。ともに左差し右のおっつけの攻めは厳しく、型にはまれば強かったけど、そうならなければ脆い面もあった。

あと上位ではなんといっても高安だろう。東の4枚目で12勝を挙げたのは立派だ。でも、またしても今場所も優勝を逃した。いつものことなのだけど、単独トップになると負けて並ばれた。それも2回もだ。小結の霧島戦は元大関同士仕方がないとしても、14日目の美ノ海戦は勝っておきたかった。気持ちの面でかなり違っていただろう。それでも千秋楽に勝って最低でも決定戦に持ち込んだのはよかった。が、決定戦は大の里の圧力がすごかった。勝っていたどころではなかった。対する高安は左が差せたけど、もう俵に詰まっていたからああして左で下手投げを打つしかなかった。そこを大の里にうまく体を寄せられて万事休す。勝負の神様は非情だ。でも、今場所の高安は左差し、右からの投げ、重い腰、かち上げ、踏み込み、圧力どれもよかった。正に紙一重であった。

平幕上位で勝ち越したのはこの3人だけ。他は大型連敗をしたこともあり、勝ち越しとはならなかった。負け越した力士で気になったのは先場所最後まで優勝争いをして大躍進した西5枚目の金峰山が6勝だった。得意の突き押しも見られたが、攻め込まれる場面も多く、調子を出せなかった。首の痛みが再発したとかあるとしたら残念だった。

中位はここは勝ち越し、負け越しともに気になる力士を挙げていきます。東6枚目の平戸海は低い攻めを徹底していたこともあり9勝。西6枚目の尊富士は相変わらずの攻めの厳しさで中盤から7連勝して9勝2敗となったところで上位との対戦が続き、最後は4連敗。ばったり落ちるシーンがよく見られた。下半身が見るからに心もとないので、そのへんの強化に努めてはどうか。西7枚目の40歳、玉鷲はこのブログでは毎場所のように取り上げているけど、今場所は10勝を挙げた。押しが強かったし、攻められても簡単に土俵を割らない。なんなら四つでも相撲を取っている。今場所目についたのは、尊富士、東9枚目・伯桜鵬、西13枚目・獅司といった若手を退けたことだ。それも一方的に攻めて勝っている。本当に40歳かと思うばかりだ。

東8枚目の熱海富士、1年ほど前頭筆頭から3枚目を行ったり来たりしていたけど、今場所はここまで落ちた。大勝ちして戻るだろうと思ったら終盤4連敗で6勝止まり。攻めるのに攻めきれず逆襲されて負けるパターンが多かった。巻き返しを期待したい。西9枚目・遠藤は初日から4連勝で、今場所は2桁勝つかと思わせたが、4連敗や3連敗があり、7勝に終わる。特に終盤土俵に落ちた際になかなか起き上がれなかったのは大いに気になる。腰か膝か股関節かどこか傷めているのだろうか?心配だ。東西の10枚目の錦木と湘南乃海はともに2桁敗。2人とも力が入っていないのかと思うような気のない相撲内容。無気力ではなくて。本当に錦木であり、湘南乃海だったのかと目を疑った。2人ともなすすべなく土俵を割っていたのでどこか悪いのかと思うのだが、こればかりは本人のみぞ知ることだ。

下位は東11枚目の翠富士が9勝。うち4勝が得意の肩透かしだった。見ていてそれで決まるのかというのからきれいに決まるのまで様々だった。お客さんもそれを見たくて会場に足を運んでいるのだと思う。こういう力士を「銭の取れる力士」という。西13枚目の獅司は二場所ぶりの幕内復帰、2場所目で初の勝ち越し、9勝を挙げた。低い姿勢、頭を付けるのはたいへんいいことだ。上背があるからそういう力士に頭を付けられると相手はなかなか攻めづらい。西14枚目の美ノ海は動いて勝機を見出すタイプで今場所はよく攻めていた。それが14日目の高安戦の勝利であろう。千秋楽には関脇・大栄翔に勝っている。東15枚目の新入幕・安青錦は獅司と同じく頭を低くするが、違うのはとにかく攻め続ける点だ。こちらも千秋楽に関脇・王鵬に勝っている。美ノ海とともに敢闘賞を獲得したのも納得だ。西15枚目・佐田の海はひと場所で幕内に戻ってきたが、復帰場所で勝ち越した。これで少しでも番付が上がるだろうから、見ているこちらも安心できる。あとは幕尻東18枚目の時疾風が10勝。中日までは4勝4敗だったのが、以降6連勝した。千秋楽に小結・霧島に敗れたのは単に実力差だろう。スピードがあり、前さばきもよく、体勢も前傾で動きがいい。あとは負け越した力士から。東12枚目の宝富士は3勝、東17枚目の御嶽海が6勝とともに十両陥落の危機だ。宝富士は前回十両に落ちたときはひと場所で戻ってこられたが、今場所の相撲を見ているとこれまで右肘だけだったサポーターかテーピングが左肘にも巻かれていた。攻めも弱く、前にバッタリ落ちる相撲を今場所は何回も見た。来場所の十両落ちは確定だろう。でも、すぐに戻ってきてほしい。御嶽海も同じような感じに見えた。粘りがなかった。密着の攻めもなかった。御嶽海らしさがまったく見られなかった。

次の番付発表は4月28日。三役の入れ替えや幕内と十両の入れ替わりが楽しみだ。両国行きたいな。今回はこんなところで。