令和8年大相撲秋場所 新番付

9月13日から始まる大相撲秋場所の新番付が発表された。

まず、横綱から。

東は大の里、西に豊昇龍となった。大の里は先場所9勝と振るわなかった。春場所途中休場、夏場所全休のあとの先場所も序盤は調子が上がらなかった。が、中盤以降は星を伸ばし、最終的に2桁には届かったものの、皆勤したのはよかった。横綱に皆勤してすごいねというのも失礼だし、言いたくはないけど、去年の九州で肩を傷めて以来苦しい土俵が続いている中で場所を全うしたのは復調の兆しと思いたい。一方の豊昇龍の先場所は右足の怪我で14日目から休場して7勝7敗1休だった。中日まで6勝2敗だったのに以降の役力士との対決は関脇・琴勝峰以外にはみんな負けて失速。既に傷めていたのか、負けが込む途中で怪我をしたのかは分からないけど、勝ち越すことすらできなかった。おまけに最近手術をしたので、今場所の出場は分からない。無理をせずに休ませて九州場所に再起をかければいい。と言いたいところだが、本人としては悩ましいところだ。照ノ富士引退に伴う棚ボタ昇進で、9場所の在位で未だに優勝がない。しかも、4場所休場している。それらに対する批判はもちろん耳に入っているだろう。報道にはなっていないが、横審からも何か言われているかもしれない。秋でも九州でも復帰場所でいきなり優勝というのは難しいだろうけど、早いうちに優勝しないと風当たりは今以上に強くなる。怪我に強い体は今さら作れないか。

1963(昭和38)年、横綱柏戸は3場所連続全休と力士生命の危機を迎えていた。しかし、初日から勝ち続け、千秋楽で同じ横綱大鵬との14戦全勝どうしの取組に勝って復活を遂げる。もっとも、柏戸は横綱として既に何回か優勝しているので王昇龍とは事情が違うが。豊昇龍についてはまだ危機的状況を跳ね返したというのを見たことがないので、頑張ってほしいと思う。

つづいては大関。

東・霧島、西・琴櫻、東2・安青錦となった。霧島は2場所連続優勝同点で今場所も綱獲り場所との位置付けだ。が、先場所も先々場所も平幕に取りこぼしが多く、安定感に乏しい。これでは豊昇龍の二の舞になりかねない。稀勢の里以降、横綱昇進の基準が少々甘くなったが、北尾あらため双羽黒の失敗から次の旭富士以降鶴竜まで長く連覇が条件のようになっていたのが元に戻っただけだ。連覇で昇進というのが長く続いた分、それが当たり前だと思っているファンも多いようだ。でも、「2場所連続優勝またはそれに準ずる成績」とあるように必ずしも連覇は条件ではなく、将来の期待値も含まれている。だから、解釈によってはここ2場所の成績でも上げようと思えば上げられる。おそらく今場所も高次の優勝が条件として出されるだろう。すなわち14勝以上での優勝だ。ここ最近の相撲内容を見ていると厳しそうだ。琴櫻はなぜか後半強くなる相撲でカド番を脱出。13日目に勝ち越したが、あとは連敗するのも琴櫻クオリティ。相変わらず波は激しく、勝ったり負けたりを繰り返して最後は勝ち越すパターンが2年近く続いている。多くの人が思い描く大関像とはまったく異なる姿を毎場所見せられているので、ファン以外で期待している方は少ないのではないだろうか。まぁ最後の塩で見せる鬼瓦はやめておいたほうがいい。そんなところだけ大関らしく振舞っても中身が伴っていないのでは冷笑のタネにしかならない。最後に安青錦。先場所3度目の優勝、合わせて1場所で大関復帰を決めたのは立派だ。大関復帰条件である10勝では満足せず、優勝を目指すと目標を立てて実現したのだから言うことはない。さらにすごいのは場所中に足首や足の指を怪我しながらも出場し、勝ち続けたことだ。そして、最後は優勝決定巴戦を制するのだから精神力は並大抵のものではない。大型の突進してくる力士に対する課題はまだ解消されていないので、そのあたりを克服しないと安青錦といえども横綱は厳しいだろう。

関脇。

先場所は4人と豪華な番付だったが、東2・若隆景が膝の怪我で手術した影響で全休、西・琴勝峰が中盤に5連敗するなど振るわず、6勝止まりと期待の力士が不本意な成績に終わる。残りの2人、熱海富士と安青錦はともに12勝と面目を施した。その結果、4人のうち安青錦が大関へ、2人が負け越し、休場となったことで西の枠が1つ空いた。そこへ入ったのが新関脇となる藤ノ川である。先場所東の筆頭で8勝したので、三役には上がれるだろうと思っていたけど、まさかの小結とばしの関脇であった。藤ノ川は正攻法あり、思い切った変化もありで見ていて面白い。2場所連続で2横綱を倒している点も小兵だけに素晴らしいことだ。ちなみに京都出身の新三役というのは198年ぶりだという。熱海富士は体格を活かした前へ出る相撲が多くなってきた。得意の右を差すとかいなを返して上手が取れていなくても前へ出るようになった。これは上位にとって脅威だろう。そして、今場所は大関獲りの場所でもある。委縮せずに自分の相撲を取ってほしい。

小結。

先場所2人とも負け越したので、総入れ替えとなる。今場所は東が新小結の伯乃富士、西は昨年名古屋以来の三役となる大栄翔が座った。伯乃富士は先場所西の3枚目で9日目に7勝2敗としたが、ここから4連敗。2桁は逃したけど、9勝をあげた。どちらかというと小柄な部類に入るが、立ち合いの出足は厳しく、前へ出る相撲が持ち味だ。去年の後半から上位に定着しているが、怪我が多く、春と夏はともに途中休場している。無事これ名馬、怪我に強い力士になってほしい…これはみんなに言えることです。大栄翔は去年の名古屋で関脇の地位で全休したのちは10枚目まで落ち、以降10枚目を2場所連続、つづけて4場所連続で4枚目を努めるという珍しい記録を持つ。先場所はこれまでのような突き押しで攻め切る相撲は減って、いなしを入れたり巧さが加わったと感じた。上位陣の脅威となれるか?

平幕を見ていこう。

上位から。筆頭には東・琴勝峰、西・琴栄峰と兄弟が並んだ。先場所、西関脇で6勝に終わっ兄と東7枚目で11勝、敢闘賞受賞の弟。同じ地位になるとはっきり比較ができてしまうのでやりにくいだろう。若元春、若隆景兄弟、若貴兄弟、さらに前の逆鉾、寺尾兄弟と見てきたけど、最高位はいずれも同じというのは興味深い。琴栄峰はいきなり筆頭になったのでどのくらい通用するのか未知数だ。勝てるのか跳ね返されるのか。東2枚目の高安は西7枚目で11勝して戻ってきた。まだまだ上位でも取れる力を持っているので期待できる。たまにぎっくり腰になったりするので、それさえなければ面白そう。西2枚目は東小結から陥落した義ノ富士。先場所は両横綱に勝ちながら攻めているのに勝ち切れない相撲が多く6勝にとどまる。今場所は落ちずに攻め切る相撲を取ってほしい。東西の3枚目、豪ノ山と美ノ海はともに先場所2枚目で7勝でなかよく1枚下がった。2人ともいい相撲を取っていたが、詰めがもう一つで最後まで攻め切れなかった印象だ。今場所は対戦相手も変わらない。真価が問われる場所となる。西4枚目の藤凌駕は東10枚目で10勝して初の上位。だが、巡業中に怪我をしたので、今場所出られるかどうか。粘っこい攻めをするのが特徴でかつての御嶽海に似ていると思っている。あ、御嶽海は十両に落ちましたね。東5枚目にはこれも初めての上位となる狼雅が座る。ここ最近の記事でもお分かりと思うが、地味ながら気になる力士の一人である。まわしを切る技術など細かい技を持っていて、腰も重い。これがどのくらい通用するのか楽しみだ。

中位は東6枚目に朝乃山が入った。先場所は優勝争いに絡んだものの、終盤星の潰し合いで失速、1勝4敗で9勝止まり。2桁勝てるかもと思ったが、なかなか厳しかった。朝乃山は元大関、右からの攻めは健在で、上位での経験も豊富なので勝ち越せるのではないか。西7枚目の錦富士は先場所10勝して6枚上がった。左を差してかいなを返して攻める速い相撲は巧さを感じる。自己最高位の西3枚目の地位が見えてきた。東8枚目には尊富士が入る。先場所は攻めがよかった。速く攻めることを心掛けているような取り口で10勝をあげた。2桁勝ち星は8場所ぶりのことで、ずいぶん久しぶりである。毎場所話題になる青森県出身幕内力士は錦富士と尊富士の2人によって今なお継続されている。西9枚目の獅司は先場所10勝しての昇進だ。頭を付けての低い相撲と攻められても簡単に土俵を割らない粘り強い相撲が持ち味で、安青錦が出るまでは初のウクライナ出身力士として期待を寄せられる。私は今も応援していますが。2桁は久々で、先場所は優勝争いに加わったが、力不足で終盤に3連敗して10勝に終わる。これまで幕内2桁の地位で上下していたが、今場所初めて幕内1桁へ上がってきた。幕内中位と下位ではどのくらい力の差があるのか、あるいはないのか。ちょっと楽しみ。東10枚目には西小結でわずか2勝しかできなかった王鵬が大きく番付を落とす。先場所はどこか悪いのかと心配するほど攻めも守りもちぐはぐだった。ここまで落ちてくると、もう開き直っていくしかない。でも、王鵬がこの地位なら普通に10桁は勝てるだろう。

下位では東11枚目に若元春、同12枚目に若隆景となった。若隆景は怪我による休場なので、この地位は仕方ないけど、若元春はここ数場所勝ち越すことができていない点が気になる。どこか悪いのだろうか。もっとも、若隆景だって今場所出られるかどうか分からない。東13枚目・朝紅龍と同15枚目に新入幕の朝翠龍、これも兄弟幕内力士が肩を並べる。同じような地位で2組4人の力士がいるとは。西11枚目・正代、西13枚目・阿炎、東西の14枚目・翔猿と千代翔馬のベテラン4人はともに5勝止まり。今場所は勝ち越しておかないと十両がより近づいてしまう。先ほども書いたけど、御嶽海が十両に落ちたので同世代のベテランの動向も気になる。自分の相撲を取ってほしい。西16枚目に新入幕の寿之富士、西15枚目・時疾風と東17枚目の幕尻に湘南乃海が再入幕を果たした。時疾風の速い相撲と湘南乃海の重たい相撲がまた幕内で見られるのは嬉しい。湘南乃海については先場所十両での相撲を何番か見たが、けっこう厳しい攻めをしていた。幕内ではあまり見られなかったから、そういう相撲も取れるんだと思った。幕内でもぜひ同じような相撲を見せてほしい。最後に東16枚目の若ノ勝が幕に残っていたのが意外でもあり、嬉しかった。先場所は東11枚目で初日から5連勝したのに6日目の藤凌駕戦で敗れた際に右ひざを傷めて、そのまま休場した。十両落ちは確実かと思ったら、5枚の降下で残っていた。11枚目での5勝(5勝2敗8休)なので、5点の負け越し、そりゃ残れますよ。怪我の状況は分からないけど、出てきたらいい相撲が取れることを期待している。

番付を上から見てきたが、今場所も話題は豊富で、どんな展開になるか非常に楽しみだ。怪我のない力士はそのまま怪我なく場所を迎えてほしい。そして、自分の相撲を取ってほしい。今回はこんなところで。