令和6年大相撲九州場所 まとめ

2024年12月7日

16日の7日目に観戦に行った九州場所は大関琴櫻の初優勝で幕を閉じた。

横綱不在の中、東西の大関による千秋楽結びの相星決戦というこれ以上ない展開になったのは大関の面目躍如であった。このところ、影の薄かった大関陣がその役目を果たすとこれだけ土俵が締まる。それを証明した場所だったと言えるだろう。

東大関・琴櫻は安定感が抜群だった。攻め込まれても慌てず落ち着いていた。それは千秋楽の豊昇龍戦でも発揮された。あれだけ攻め込まれも足が地に着いていた。だから、冷静にはたき込めた。14勝での優勝は立派だ。対する豊昇龍、7に目と千秋楽にばったり落ちる相撲で2敗したとはいえ、今場所は強引な投げはほとんど見られず、流れの中での投げで無理がなかった。それによく前に出ていた。次点の13勝もまた高レベルな成績だ。その一方で新大関・大の里は硬かったか、自分の相撲が取れなかった。相手も研究してきて簡単に勝たせてもらえなくなっているのもたしかだ。自分より小さい相手に手こずる場面が多く見られた。取りにくいのかもしれない。10勝はすると思っていたけど、9勝止まり。大の里のことなので来場所はまた修正してきそうだ。

関脇は東の霧島が初日からまさかの5連敗スタート。これが尾を引いて6勝しかできなかった。どこか傷めているのだろうか。中盤盛り返したけど、最後に3連敗して万事休す。来場所は平幕が濃厚だ。見ていてどこか悪い印象はなかったけど、単に波に乗れなかっただけというのならいい。実際のところはどうなのだろう。西の大栄翔は勝ったり負けたりで8勝止まり。この実力が伯仲している中、2桁勝つのはそう容易ではない。

小結は東・若元春が10勝と星を2桁に乗せた。左差し右おっつけは強烈。厳しい相撲で関脇2人には勝っている。審判部は今場所の結果が大関取りの起点になるとの見解を示した。足首だったかの怪我は癒えたのだろう。ただ、先場所後に同じように審判部に言われた霧島を見たばかりなので、若元春にはそうならないよう願うばかりだ。西の正代は久々の三役だったけど4勝に終わる。前へ出る相撲がけっこうあったけど、途中で諦めたり、土俵際で体を入れ替えられたりで白星を伸ばすことはできなかった。攻められてあっさり土俵を割るのも正代らしいといえば正代らしい。

平幕上位は期待の若手、東西の筆頭・王鵬と平戸海はそれぞれ6勝と4勝に終わる。王鵬は攻めがよく、攻められても逆襲に転じるなど以前より力強さが増した。ただ、今場所は序盤から続いた役力士との対戦で調子が上がらなかった。平戸海は4連敗、7連敗と大型連敗を喫してしまった。終盤に3連勝して4勝としたけど、ちょっと空回りしていたように感じた。一方の東2枚目・若隆景は10勝、東3枚目・阿炎は11勝と貫録を見せてともに2桁勝ち星とした。このあたりは若手とは違うなと思う。若隆景は低い姿勢からの攻めがよく、たはきにも落ちない。おっつけで横を向かせるのさすがだと思う。阿炎は得意のもろ手突きの腕がよく伸びていた。それが7日目の豊昇龍戦での勝ちにつながった。強烈でないと足腰の強い豊昇龍相手にああもきれいに決まらない。あと、3場所連続で7勝8敗だった西3枚目の熱海富士が6連敗がありながら勝ち越したのはよかった。

来場所は三役から霧島と正代が落ちてきそうなので、その空いた2枠は若隆景と阿炎にすんなり決まりそうだ。

すみません、ここまでは11月26日の記述です。風邪を引いたりして週末ごとに体調を崩してしまい、平日は書く時間がなく、週末はそれどころではなく、この有り様です。

気を取り直して…。

平幕中位は東6枚目・隆の勝と西8枚目・豪ノ山がともに11勝と健闘した。隆の勝は名古屋場所で優勝争いをしたものの、先場所は大きく負け越してしまった。そして迎えた今場所は得意の右差しからの攻めが冴えて、終盤まで優勝争いに絡んだ。終盤、役力士との対戦が続いて3連敗して脱落したが、かつては関脇でも10勝したこともある実力者だ。こういう力士がいると場所は盛り上がる。一方の豪ノ山は上位から中位を行ったり来たりしていて、今場所は久しぶりに8枚目まで落ちていた。この地位だと持ち味のはず押しからの前へ出る相撲がよく出ていた。来場所はまた上位に戻るので、そこで今場所のような相撲を見たい。

毎場所触れずにはいられない西10枚目の宝富士と東11枚目の玉鷲。ともに8勝と勝ち越した。もうそれだけでいい。宝富士は初日の玉鷲戦で右の小手投げを打たれた際に左ひじが極まってしまい、たいへん痛そうにしていた。場所が勤まるのか心配だったけど、3日目から7連勝。終盤は息切れして1勝5敗に終わり、8勝に留まる。が、今場所は粘り強い相撲が多く、それが勝ち越しに繋がった。玉鷲は勝ったり負けたりだったが、終盤4連勝して勝ち越し。はずや小手投げなど強烈で健在ぶりを示した。2人とも13日目に勝ち越したので2桁も狙えたけど、最後は連敗して仲良く8勝止まり。

下位は東14枚目の千代翔馬が久々の2桁11勝。このところ、幕内と十両を行ったり来たりしてきたけど、これで安心できる地位に戻れるだろう。今場所は足腰のよさが随所に出て、それが勝ち星に結び付いた。西16枚目の尊富士は春場所で新入幕優勝を果たして以来の幕内の土俵で10勝を挙げた。今年は皆勤すれば優勝が続いていたが、上位が充実していた今場所はさすが無理であった。それでも大の里を破っている辺りは大器の片鱗を見せた形だ。尊富士、大の里ともにいえるのは基本に忠実なこと、腰はよく割れ、攻めるときは腰を落としている。そして、攻めが速い。ただ、気になるのは尊富士は大の里と比べて体が硬そうに見える点だ。これは怪我に繋がるので要注意だ。怪我で思うように地位を上げられなかった力士を何人も見ているだけにそうなってほしくないと願っている。

玉鷲や宝富士を取り上げるなら彼にも触れないと怒られそうなのが佐田の海だ。今場所は西12枚目でまさかの4勝に終わる。今場所もいつもの通りもろ差し狙いの速攻で攻めたが、あと一歩が出ず前に落ちる相撲が多かった。攻め急ぎか、空回りか、詰めが甘かったか。中盤から終盤にかけての7連敗が痛かった。後ろ5枚で7点の負け越しでは十両落ちは免れないだろう。十両から上がってくる力士との兼ね合いでギリギリ残れるかもといったところか。新入幕の2人、東16枚目の獅司と東17枚目の朝紅龍はそれぞれ5勝と6勝で、十両陥落は避けられない。ともに圧力負けか。番付上ではたった数枚の差なのに段が違えば、簡単に勝たせてもらえない。

さて、今場所の優勝は琴櫻、次点が豊昇龍となったわけだけど、来場所このくらいのハイレベルな優勝争いになって、優勝が逆となった場合、あるいは2人とも横綱になるかもしれないと密かに妄想している。過去に先日亡くなった北の富士と玉乃島が大関時代、2場所続けて優勝争いを演じて1970(昭和45)年初場所後に同時昇進を果たした例があるからだ(玉乃島は横綱昇進とともに玉の海に四股名を改めている)。あのときも大鵬の一人横綱で状況が今と似ているから余計そう思うのだ。そこに大の里が割って入れば、これもまた面白い展開で、ファンとしては目が離せない。年が変わって、時代が動くか?

今場所は生れて初めて観戦した場所として私の記憶に残ることであろう。と言ったそばからまた行きたいなと思うのであった。

今回はこんなところで。