令和4年大相撲名古屋場所新番付

早いもので、夏場所が終わったと思ったら、もう名古屋場所である。場所が終わってひと月ほどで番付発表となるから無理もない。では、さっそく見ていきましよう。

横綱は照ノ富士一人なので、特にどうこうはありません。出場すれば、優勝争いの筆頭に来るのは間違いない。ただ、押し相撲や動き早い力士には手を焼く場面が目立つ。先場所敗れた3人はいずれも押し相撲力士であった。立ち合い踏み込んでからの前みつが取れるかどうかがポイントとなる。

大関陣は貴景勝、御嶽海、正代の順。通常通り前場所の勝ち星の多い順なわけだが、それぞれ8勝、6勝、5勝となんとも情けない。御嶽海が場所中にどこか痛めたという話を聞いていたので、多少同情の余地はあるけど、あとの2人はそういう話は聞いていない。特に正代は春場所の頑張りがうそのように黒星を重ねた。大関が頑張るというのも変な話ではあるが、正代の場合は必死に取らないと勝てていないのが現状だ。それに土俵を割るときの諦めが早い。やる気を問われても仕方がない。貴景勝は首に不安があるのだろうか。でも、先場所の相撲を見る限りは庇うようなそぶりは見せていない。春場所終盤がさっぱりだったから、それをそのまま引きずっていたのかもしれない。ともかく、今場所もあんな相撲を見せられたら、ファンはたまったものではない。最低2桁は勝ってもらわないと。でも、こう体たらくが続くと、落ちてもいいよとも思う。毎場所言っているような気がする。

穿った見方。大関は2場所連続で負け越さない限りその地位に留まれる。それを逆用して隔場所で8勝でいいやと思っているのではないかということだ。極端な話、8勝と全敗もしくは全休の繰り返しでも大関の地位は保たれるのだ。つまり、年間24勝でもいいわけで、もしそうだとしたら、ファンばかりではなく、他の平幕力士にも失礼だ。もちろん、そんなことは考えてはいないだろうけど、数字の上ではそれは可能だ。

大関の話をすると面白くないので、次は関脇。東は先場所に引き続き若隆景、西は先場所西小結で11勝を挙げた大栄翔が返り咲いた。若隆景の大関獲りは振り出しでいいだろう。あの玄人はだしの相撲っぷりは見ていて好角家を唸らせるものがあるが、先場所の相撲でも分かる通り、まだ安定感に欠ける。実力はあるが、いきなり優勝して、次期大関とか言われ出して、自分の相撲が取れなかったのだろう。前に落ちる相撲も何番かあった。その辺が修正できればまた2桁勝つのは難しくはない。大栄翔は押し相撲のいいほうのツラが出たということか。先場所は2連敗が一度だけと大型連敗はしなかった。大関があの調子だから関脇は2人とも2桁勝てるのではないか。

小結。東は先場所と同じく豊昇龍、西は先場所西関脇で惜しくも7勝の阿炎。豊昇龍は少し体ができてきた。以前と比べると一回り体が大きくなっている。足腰がいいので、つい投げ技に頼るところがあるが、四つ身を覚えて安定感を増してほしい。あと、速攻に磨きをかけてほしい。そうすれば、おじさん(朝青龍)のような早い相撲が取れるのではないか。あ、似るのは相撲だけでいいです。素行を真似てはダメです。阿炎は先場所は突きだけの相撲ではなかった。それに攻め切れなかった相撲もあった。ここ数場所はめている肘のサポーターが気になる。それでよく伸びる腕が出なくなっているのだろうか。あのもろ手突きからの突き放しは魅力的なので、怪我とうまく付き合いながらやってほしい。

平幕上位。今場所は割り喰った力士が多く、ちょっとかわいそうであった。関脇小結の顔ぶれが変わらない上に上位陣は9~11勝を挙げた力士が4人もいる。みんな最低でも小結には上げられる星を挙げている。で、どうなっているかというと、東筆頭霧馬山、西隆の勝。東2枚目琴の若、西逸ノ城。東3枚目玉鷲、西宇良。東4枚目若元春、西高安。東5枚目遠藤、西佐田の海という面々。新型コロナウィルス感染で休場していた逸ノ城を除いて玉鷲までは本当に気の毒。どんづまりのフンづまり(失敬)状態だ。特に霧馬山は春場所が東4枚目で10勝、先場所は東2枚目でまたしても10勝と、いずれも三役に上がれるくらいの成績を残しているだけに悔しいだろう。番付を少し戻したものの、宇良の怪我が心配だ。癒えていればいいが。ともあれ、若手の実力者とベテランがひしめく上位陣は目が離せない。

ホント、関脇も小結も無理に東西各1名などと固執せずにその地位と成績に相応しければ、いくらでも設ければいいのにと思う。かつての記録では関脇は5人(昭和47年名古屋のみ。4関脇は24場所)、小結は4人(直近は令和元年九州。合計14場所)の例があるので、できないことはない。こういう例を見ると当の本人たちは損した気分なのではないかと思ったりもする。

平幕中位。ここは中堅~ベテランが多い。新鮮味に欠けるけど、ひと癖もふた癖もある力士が並ぶ。特に東。9枚目の志摩の海を除けば大ベテランばかりだ。でも、力はまだあるから型にはまれば強い。碧山の突き押し、栃ノ心の右四つ、隠岐の海の左四つ、千代大龍の突きからのはたきなどやはり「型」がある。西8枚目の錦木も重い腰からの攻めは脅威だ。東西の9枚目志摩の海、琴恵光はタイプ的にはよく似ていて渋い相撲を取る。この中で西10枚目の明生が気になる。春場所で1勝しかできず、先場所は西13枚目まで落ちて迎えた場所であった。この地位で明生なら2桁は勝つだろうと誰もが予想していたが、8勝止まり。どこか悪いのだろうか。

平幕下位。若手が多い中、若干ベテランが入っている。東西の11枚目の琴勝峰と翠富士が楽しみだ。琴勝峰は前半よかったのに後半失速して6勝。しかし、攻めはいいものをもっているので、それを活かしてほしい。翠富士は1年ぶりの入幕で9勝した。伝家の宝刀肩透かしも健在で、さらに上位を目指してほしい。東13枚目の一山本は後半大ブレーキで8勝止まり。でも、あの突き押しは阿炎に似ていて気持ちがいい。体型もよく似ており、上位で暴れまわってほしい。東15枚目の阿武咲は怪我からの復帰を期す。この地位なら大勝ちしてもおかしくはない。あと、西15枚目の王鵬と東16枚目の豊山はなんだろう、伸び悩んでいるというか、勝ち切れないというか、もどかしい土俵が続いている。2人とも恵まれた体格を持っているのにそれを活かし切れていない。それに押しなのか四つなのかはっきりしないように見える。心配なのが西12枚目の宝富士。先場所は粘りがなく、4勝しかできなかった。得意の左四つになっても勝てない相撲があり、少し陰りが見えてきたか。東14枚目の妙義龍もこの地位では物足りない。

あと、新入幕が東17枚目の錦富士、再入幕が西14枚目剣翔、西16枚目大奄美、西17枚目千代丸といった具合。錦富士は左四つ得意とある。照ノ富士を筆頭に関取6人を擁する伊勢ケ浜部屋だけに稽古は豊富だろう。幕内で通用するか。あとの3人は幕内ではおなじみ。ただ、千代丸を除いた2人は前頭2桁で留まっていて、なかなか殻を破れないでいる。ちょっとは上位を賑わしてほしい。

と、上から順に見てきました。先場所十両で大負けをして幕下陥落が濃厚だった関取最年長38歳の松鳳山が引退した。こういうのを見るとベテラン勢も徐々に引退していくのだろうかと寂しくなるが、その一方で若手の成長もあり、新陳代謝が生まれるのもまた仕方のないことだ。だから、進歩があり、面白くもなる。若手は実力を発揮できるか、ベテランは巻き返しを図れるか、今場所もなかなか面白くなりそうだ。

では、今回はこんなところで。