令和6年大相撲春場所新番付

2024年3月30日

本題の前に。前回の記事が2月3日だった。こんぴらさんシリーズだけど、まだ完結していない。11月のネタをいつまで引っ張っているのだろう。それより何より、投稿があまりに少なすぎる。誰のせいでもない、私が悪いんです。

気を取り直して、本題に入ります。

3月10日から始まる春場所の新番付が2月26日に発表された。順に見ていこう。

横綱照ノ富士は見事に復活を遂げた。前半はもたついたけど、後半は無傷で13勝。強さと巧さが補い合っての優勝ではないかと思う。さて、今場所はそれが維持できているかどうか。仕方のないことだけど、最近は優勝するくらい好調でないと皆勤できていない。去年は優勝1回のほかは全休4回、途中休場1回というのがそれを物語っている。

大関陣は新大関琴ノ若を加えて4大関となった。布陣は豪華だけど、中身が伴わないと興ざめする。序列は東・霧島、西・豊昇龍、東2・貴景勝、西2・琴ノ若だ。霧島は再度綱獲りへの足場固めをせねばならない。豊昇龍は先場所はさぞ無念だったろうけど、強引な相撲はその分体に負担をかけているわけで、もっと安定感を磨いてほしい。貴景勝は途中休場でも西2枚目にはならなかったが、怪我の状態はどうなのだろう。カド番だけに心配だ。でも、勝ちたいために変化などはやってほしくない。琴ノ若は柔らかい、大きな相撲が魅力だけど、横綱はじめ先輩大関に分が悪いので、これらを越えていかないとその先は見えてこない。とにかくクンロクとかハチナナとか言わるような大関は生まれてほしくない。でも、これだけ大関が増えるとその心配は大きくなる。

関脇は東・大栄翔、西・若元春の2人。大栄翔の突き押しは先場所も健在で、今年は2桁めざしてほしい。若元春は先場所の怪我の影響でホームにおりる。東筆頭まで落ちていたけど、その一番難しい地位で10勝を挙げたのはさすがだ。

小結はともに再昇進の東・阿炎、西・錦木と対照的な2人が並ぶ形となった。阿炎は後半よく攻めて勝ち越し、三役に復帰した。亡き師匠への恩返しとなったことだろう。長い腕から繰り出す突っ張りは見ていて気持ちがいい。錦木は西5枚目から一気に小結だ。自分より上で勝ち越したのが若元春、阿炎しかいなかったからこその番付運だ。粘り腰で勝ち越せば面白い存在になりそう。

続いて平幕。

面白いと思ったのは先場所西小結だった宇良と西筆頭・熱海富士がともに6勝に留まったのにそれぞれ半枚しか下がらず、東筆頭、東2枚目となったことだ。東4枚目の翔猿にいたっては7勝で同じ地位に据え置かれている。平幕上位に多くの空席ができたのに下位で大勝ちした力士が出なかったためだろう。西筆頭には先場所初日から7連勝したのに怪我で途中休場、再出場を経て9勝を挙げた朝乃山が戻ってきた。西7枚目での9勝で西筆頭だから錦木と同じく番付運がいい。しかし、最近の朝乃山は休場再出場が多い。年齢も30になり、怪我も治りにくくなっているのだろう。これでは大関復帰は難しいと思われる。三役も平幕上位もそんな感じの上昇幅なのでまるで成金のようだけど、王鵬もまたその一人だ。西11枚目での10勝で東3枚目まで番付を上げた。先場所の熱海富士と同じで、じりじりと上がってきたわけではないので跳ね返されそう。楽しみなのは西5枚目の大の里だ。先場所新入幕で11勝を挙げて西15枚目から一気に10枚も上げた。先場所後半は好成績だったこともあり、上位との対戦が組まれたが、まったく歯が立たなかった。それが生きるか、やっぱり壁は厚いか試される場所になる。

中位はこれといった力士は見当たらない(失礼)。西6枚目・豪ノ山と東7枚目・金峰山の若手には頑張ってほしい。2人ともこの地位に定着しつつある。それだけ地力を付けている証拠だ。豪ノ山の押しは魅力的だし、金峰山は先場所足を痛めながらも皆勤して7勝できたのはよかった。後半戦の負けた相撲など取組の後、足を引きずるほどだったから見ているほうはヒヤヒヤしていた。大ベテランの玉鷲は西7枚目。先場所7勝3敗から失速して8勝止まり。それでも勝ち越したのだから大したものだ。東西の10枚目に正代と御嶽海が並んだのは面白い。2年前はともに大関だったのに勢力地図はすっかり変わってしまったと思わせる番付である。

下位は東17枚目・尊富士が新入幕。伊勢ケ濱部屋からまた楽しみな力士が出てきた。幕下だけ4場所を要したが、あとの序ノ口、序二段、三段目、十両は1場所で通過している。序ノ口から所要9場所での入幕は元小結・常幸龍に並ぶ1位の記録だそうだ。ちなみに戦前には横綱羽黒山が序ノ口から十両まで各段優勝、1場所通過…6場所目に新入幕という記録がある。ちょっと心配なのは両膝に爆弾を抱えている点だ。これが再発したらせっかくの逸材も失いかねない。今場所はこの尊富士以外にも4人の再入幕力士がいる。東14枚目・錦富士、西14枚目・北の若、西15枚目・狼雅、西16枚目・大奄美で、この中でも錦富士には期待している。小さいながら正攻法で見ていて面白い。この錦富士と北の若、狼雅は2場所ぶりの幕内。大奄美はなんと10場所ぶりの復帰だ。

ちょっと十両も。残念なのは西筆頭の宝富士だ。平成25(2013)年初場所以来守ってきた幕内の座をとうとう明け渡すこととなった。東16枚目で迎えた先場所は6勝に留まり、十両陥落が濃厚となっていた。千秋楽に敗れたとき土俵にうつ伏せになってしばらく起き上がれなかったのが印象に残っている。もう一人、西11枚目の碧山は先場所、西17枚目の幕尻で初日から7連敗しての休場だったので1つも勝てずにここまで落ちてしまった。これでは今場所中の引退もあり得る。明るい話題としては1年前の春に膝の怪我をして関脇から幕下まで落ちていた若隆景が十両まで戻ってきた。はやく幕内での相撲を見せてほしい。それからこれも怪我から復帰の西13枚目の伯桜鵬も楽しみだ。

と、こんな感じです。上位も下位も十両も面白そうな場所になりそう。「荒れる春場所」になるのか?横綱大関陣には安定して勝ってほしいけど、下の力士が上位を破って混沌とするのも楽しい。そのあたりも注目だ。

今回はこんなところで。