令和6年大相撲夏場所新番付

4月30日、大相撲夏場所の新番付が発表された。

先場所は新入幕で幕尻だった尊富士の初優勝で終わったわけだけど、「荒れる春場所」を通り越して「『大』荒れの春場所」場所であった。その原因を作ったのは途中休場した横綱・照ノ富士と序盤から4連敗して波に乗れなかったのか、もともとどこか悪かったのか5勝止まりだった東大関・霧島だろう。最上位の2人が本来の相撲を見せていれば、新入幕優勝を許すようなことなかっただろう。

では、上から見ていこう。

横綱はずっと東の照ノ富士のみ。今場所は大丈夫だろうか?とりあえず皆勤してほしい。でも、皆勤する以上は最低でも10勝はしてほしい。照ノ富士は優勝10回を目標にしているので、そこまではモチベーションを保つことができるだろう。そのあとは極端な話、翌場所に引退してもいいと思うけど、怪我続きで次の優勝もなかなか覚束ない状況だ。本人も早く楽になりたいのではないかと思う。そのとき、他に横綱がいなくても気にすることはない。

大関陣は先場所の成績順に東・豊昇龍、西・琴ノ若あらため琴櫻、東2・貴景勝、西2・霧島となった。豊昇龍は優勝次点ではあったけど、相変わらず安定感のない相撲だった。琴櫻は新大関としてはまずまずの成績だった。5敗しているけど、全体的には内容は悪くなかった。昭和49年名古屋以来、おじいさんの四股名・琴櫻の復活は大いに盛り上がるだろう。貴景勝はカド番を脱出したものの、今度は霧島がカド番だ。前にも書いたけど、大関も4人になれば誰か1人は不調の力士が出てくる。みんなそろって二桁勝つなどというのは滅多にない。だから、東西2人で十分だと思っている。が、4人いるならみんな持ち味を発揮して二桁をめざしてほしい。

関脇は東・若元春、西・阿炎となった。先場所はともに9勝で若元春は西から東へ、阿炎は東小結からの昇進だ。若元春は大関戦が2勝2敗と互角だったが、尊富士と大の里といった優勝争いを演じていた若手2人には勝てなかった。もうひとつ殻を破れない印象がある。これは弟の若隆景も同じであと一息といったところで怪我をしてしまった。まずは安定して二桁勝つことを目標にしてほしい。阿炎は初日から2大関を破るなどして5連勝して波に乗った。前半で6勝したのでどれだけ勝つかと思ったけど、後半は思うように勝ち星を伸ばせず9勝。それでも突きは腕がよく伸びていた。

小結は東に約3年ぶりの三役となる朝乃山、西には大の里が入幕3場所目で早くも三役に就いた。朝乃山はこのところ幕内上位にはいるものの、休場がちで三役が遠かったが、ようやく戻ってきた。この休場が多いのが気になる。年齢的にも30を超え、怪我の治りも悪いだろうから気を付けてもらいたい。あと、いつものことながら、土俵際での詰めが甘いのでこれでいくつ星を落としていることか。実にもったいない。体を預けるとか差し手の方向に寄っていくとか慎重に取らないと墓穴を掘ることになる。一方の大の里は対照的に基本に忠実。よく腰も割れていて、土俵際でちゃんと腰を落としている。この辺りは遠藤に近い。遠藤の体格を一回り大きくしたのが大の里といったところだろうか。

つづいて平幕。

上位は熱海富士が東筆頭、東西の2枚目に平戸海と豪ノ山、東4枚目に王鵬と若手が並んだ。熱海富士は上位に定着しつつあるし、王鵬は初の上位だった先場所を照ノ富士戦の金星を含む7勝と善戦したのが大きい。平戸海は小さいながら正攻法の相撲で、豪ノ山は粘っこい押しでじりじりと番付を上げてきて自己最高位だ。この辺りの力士が大勝ちはしなくとも8勝くらいで乗り切るようだと面白い。あと、西筆頭の大栄翔は8場所ぶりの平幕。悔しさをバネに奮起したいところだ。東3枚目には先場所優勝次点の高安が戻ってきた。他に西3枚目・翔猿、西4枚目・宇良といったくせ者もいて横綱大関といえども安閑とはしていられない。

中位は先場所優勝した尊富士が東6枚目と一気に11枚も番付を上げた。西には同じ伊勢ヶ濱部屋の翠富士が入った。尊富士は千秋楽に強行出場して優勝を勝ち取ったが、それが代償とならないことを祈る。出場できるのかどうか心配だ。東7枚目の錦木は先場所新小結で初日に照ノ富士に勝ってからまさかの11連敗で3勝に終わり、ここまで落ちた。左四つの型があり、腰が重く、それでいて攻めだしたら速い。来場所はそんな持ち味を発揮して上位に戻ってほしい。玉鷲は先場所西7枚目で7勝だったのに東9枚目と1枚半も落ちた。ちょっとかわいそうだけど、玉鷲のことだから強烈な突き押しで勝ち越して番付を上げるだろう。東西の10枚目は湘南乃海と金峰山となった。湘南乃海は初場所とは打って変わって先場所は本来の相撲で番付を少し戻した。金峰山は先場所途中休場、再出場しながらも6勝7敗2休とダメージが小さく済んだ成績だった。再出場してから13日目で6勝したときはこのまま勝ち越すかと思ったが、最後に連敗して叶わなかった。が、それだけ実力があるということなのだろう。今場所の土俵が楽しみ。

下位は十両との入れ替わりが5人。新入幕が西14枚目の欧勝馬と東15枚目の時疾風。欧勝馬は豪ノ山と新十両が同じ令和4年7月で、豪栄道と琴欧洲の弟子の出世争いかと思ったけど、入幕では差が付いた。欧勝馬がようやく追いついて、得意の押しで土俵を沸かせたい。時疾風は昨年引退した豊山以来の時津風部屋出身力士だ。小さいながら四つ相撲で投げが得意というから面白そうだ。再入幕は東13枚目・水戸龍、東16枚目・友風、西16枚目・宝富士の3人。特に宝富士は1場所で戻ってきたのが個人的には嬉しい。先場所は西十両筆頭で8勝だったのであるいは東に回されるかもと思ったけど、2枚?上がっている。「?」が付いているのは幕内は東17枚目までしかないから。1枚半かもしれない。その東17枚目は剣翔となった。先場所自己最高位の東6枚目まで上がったのに怪我で途中休場して2勝3敗10休に終わった。さすがに十両落ちかと思ったらギリギリ残った。怪我が回復していれば、本来の右からの攻めが見られるだろう。

と、ざっと見てきたけど、やはり平幕上位の若手に期待だ。この辺がどのくらい役力士を喰うか。それで優勝争いの行方が変わってくる。横綱が安定した相撲を見せれば、隙を見出すのは難しいけど、そうでなければ今場所も誰が優勝するか分からない荒れる展開になりそう。横綱相撲を見たい気持ちもあるし、その一方で荒れる土俵も見てみたい…ファンとはそういうものです。

今回はこんなところで。