令和5年大相撲秋場所新番付

9月10日から大相撲秋場所が始まる。その新番付が発表されたので、それをみていこう。

横綱は照ノ富士一人は変わらず。が、先場所は腰の椎間板ヘルニアで途中休場した。今場所も出てこられるかどうか分からない。無理して出場して、結局休場するのだったら始めから休むのが賢明だ。そして、次の場所に期するほうがこちらも安心する。出る以上は優勝争いをしてもらわないと横綱の値打ちがない。

続いて大関。東・霧島、西・貴景勝、そして新大関の豊昇龍は西2枚目となった。これは東横綱・照ノ富士とのバランスを取った形で、横綱大関が東西に2人ずつ座ることになる。大関3人と見た目は豪華だけど、霧島と貴景勝はカド番だ。霧島は先場所の相撲を見ている限りなんとかなりそうだけど、貴景勝は大丈夫なのだろうか?首と両膝の怪我は簡単に癒えるものではない。かといって、稽古を休むわけにもいかない。勝ち越しが目標となりそう。寂しいけど、仕方がない。豊昇龍はいつもの相撲が大関でも取れるかどうか。怪我だけは気を付けてほしい。

関脇は3人。東・大栄翔、西・若元春、東2枚目に新関脇・琴ノ若となった。4場所連続小結となった先場所、初めて2桁11勝を挙げて関脇昇進を決めた。大栄翔、若元春は大関獲りがかかった先場所はともに9勝で振出しに戻った。が、地力はあるので優勝争いを演じればあるいは数場所後には大関になれるかもしれない。大栄翔は突き押し、若元春は左四つを磨いて上を目指してほしい。琴ノ若にしてもだんだん攻めが厳しくなってきた。先場所のように大型連敗がなければ大関も夢ではない。

そして、小結。東・錦木、西・翔猿の2人。錦木はついに新三役。先場所は中盤までトップを走って10勝を挙げての新小結初土俵から所要103場所は史上3位のスロー出世、33歳0ヶ月での昇進は歴代6位の高齢だ。地味ながら腰が重く、攻めると速い。玄人を唸らせるいぶし銀な相撲を取る辺りは宝富士と似ている。今まで三役に上がれなかったのが不思議なくらいだ。翔猿は3場所ぶりの三役。相手にも見ている人にも何をするか読めない相撲を取るのが面白く、目が離せない。土俵をうまく使う力士だ。上位に定着しているけど、小結2場所に留まる。そろそろ関脇に上がってもいいだろう。

平幕を見ていこう。まず上位から。先場所豊昇龍と優勝決定戦で争った北勝富士が東の筆頭まで戻ってきた。先場所のような突き押しが出せるか。つづいて西2枚目・朝乃山。前半はまずまずで折り返したものの、豊昇龍戦で腕を痛めて休場、4日休んだのち、再出場して残り4日を全勝して勝ち越した。せいぜい2勝くらいだろうと思っていたから驚いた。これで番付を1枚半上げたのだから怪我の功名といっていいだろう。その怪我はどのくらい癒えているのだろう。三役に戻れるか。もう29歳、回り道があったからゆっくりしてもいられない。が、いつも言っているけど、今の相撲では三役復帰がいいところだろう。西3枚目の玉鷲は先場所の西7枚目から1点の勝ち越しで4枚上がって上位に戻ってきた。あのはつらつとした相撲を上位で見られるのは嬉しい。東西の5枚目・豪ノ山と湘南乃海に期待だ。ともに新入幕の先場所、10勝して敢闘賞を受賞して早くも上位と当たる地位に入った。どこまで自分の相撲が取れるか。楽しみだ。

次は中位。注目は西9枚目の伯桜鵬。先場所は新入幕優勝かと話題となり、番付を上げたが、左肩の亜脱臼で巡業を休んだという。先々場所あたりから左肩にはテーピングを巻いた痛々しい姿で土俵に上がっていたから気にはなっていた。先々場所というと、まだデビュー3場所目だ。それでも勝つから非凡であることには違いない。基本がしっかりている点は西10枚目の遠藤に似る。その上、太り過ぎでない程度に体格も大きい。将来を嘱望されているだけに怪我はちゃんと治してほしい。その遠藤は先場所の東16枚目からちょっと戻した。この地位なら10勝も当然だろう。先場所はうまさが光った。相変わらず右上手を引く位置がいい。が、知らぬ間にもう32歳だ。もうひと花咲かせてほしい。あと、西7枚目・王鵬と東10枚目・金峰山には奮起してもらいたい。まだ殻を破っていないように見える。一皮むけると面白いと思う。

最後に下位。東11枚目の御嶽海はどうしたことか、先場所わずか3勝でここまで落ちてしまった。大関時代の怪我がまだ癒えていないのだろう。ここはじっくり治して出直してはどうか。もう大関には戻れそうにないから、せめて長く取ることを考えるのもいいと思う。西11枚目・北青鵬は横からの攻めに対応できない場面が多く、5勝止まりで東6枚目から落ちてきた。イメージとしては元横綱・双羽黒や元大関・貴ノ浪に似ているけど、今のスタイルを変えない限り、上は望めないだろう。と、先場所も同じようなことを書いたような気がする。あと、今場所のこの地位はベテランが多く名を連ねている。大負けすれば十両に落ちる地位だけに彼らにとってはまさに正念場といったところだろう。かといって、少々勝ち越したくらいではこの地位から抜け出ることはできない。厳しい土俵が続きそうだ。今場所は新入幕はおらず、再入幕が東15枚目・熱海富士と東16枚目・輝の2人。このうち、5場所ぶりに戻ってきた熱海富士に期待したい。去年の九州で新入幕を果たしたが、4勝と跳ね返された。恵まれた体格からの寄りや押しの攻めが通用するか楽しみだ。次こそは勝ち越したい。

ざっと注目の力士をみてきた。優勝争いはどうなるのだろう。横綱の状況、カド番の大関2人をみると、今場所も誰が優勝するか分からない。それだけに見るほうは面白い一方で軸がない寂しさはある。でも、結局最後には「面白かった」で終わるんですがね。熱戦を期待しましょう。

今回はこんなところで。