令和8年大相撲名古屋場所 まとめ
大相撲名古屋場所は大関から陥落した関脇安青錦が巴戦による優勝決定戦の末、12勝3敗で3度目の優勝と来場所の大関復帰を決めて幕を下ろした。
千秋楽を迎え、優勝争いのトップは2敗の安青錦、1差で大関霧島、関脇熱海富士の3人に絞られていた。これより三役の最初の一番でまず安青錦と熱海富士が対戦。安青錦が熱海富士の圧力を堪え切れず、引いたところを押し出されて2人が並ぶ。次の大関同士の一番で霧島が琴櫻を下して3人が3敗となった。結び後の決定戦では霧島と熱海富士の対戦から始まり、熱海富士が寄り切って霧島に勝つ。続く安青錦戦では本割と同じ轍は踏まず、前傾姿勢を保った安青錦が寄り切りで熱海富士に勝つ。そして、霧島戦でも終始頭を付けて上手を遠ざける相撲を取った安青錦が霧島を寄り切って優勝決定。先々場所から左足の怪我が続き、場所中もさらに傷め、悪化もさせた中の優勝で、まさに壮絶な死闘であった。本割で決めないと決定戦では勝てないだろうと思っていただけにその精神力の強さに脱帽するしかない。怪我の状態からして場所前から不安視されていたところへ中日にさらに左足を傷めてしまい、本人も周囲も不安な中、相撲を取り続けた。そして、その不安を気力と精神力で打ち破った。大関から関脇に陥落した場合、翌場所10勝すれば大関に復帰できる特例は1969(昭和44)名古屋場所から始まり、その間に安青錦を含めて7人8例あるが、優勝したのは安青錦が初のケースとなった。今後は来場所直前まで治療に専念してほしい。そして、巡業はもちろん休場だ。
では、上から順に見ていこう。
横綱はひどすぎる。スルーしてもいいですか?ダメですか、あぁそうですか。東・豊昇龍は7勝7敗1休、西・大の里は9勝6敗と平幕なのかなという成績に終わっている。序盤は好調な滑り出しだったものの中盤以降は役力士との対戦で負けが込んで、最終盤の14日目に右足の怪我で休場。攻めが雑で逆転されたり、相変わらず投げに頼った相撲で墓穴を掘ることが多かった。体格が小さい部類に入る豊昇龍がそんな相撲を取っていたのでは勝てるはずもない。これでまた今場所も優勝を逃す。一方の大の里は攻めれば攻め急いで突き落とされ、攻め切れないと見るや引き技で相手を呼び込んで押し出される相撲が多かった。足がバタバタする印象で、相撲の基本であるすり足ができていない。怪我をして以降、そんな相撲が多く見られ、安定感に乏しい。勝つ相撲は盤石の内容なので、それがなぜ続かないのかと不思議に思う。協会からも横審からもダメ出しを喰らいそうだ。ただ、ともに怪我を抱える中で皆勤した大の里と途中休場した豊昇龍。豊昇龍のけがの程度は計ることはできないけど、この差は大きいのではないか。
大関は東の霧島が今場所も優勝同点の12勝で場所を終える。3敗のうち2つは平幕相手で内容も攻め込まれており、評価は低い。終盤に顔が合った苦手の安青錦戦はなすすべなく敗れ、決定戦でも同様に歯が立たず、結果的に優勝しなくてよかったと思うのであった。私の穿った見方だと、もし決定戦で優勝していたら、協会が当初示した「内容のいい高度な」優勝とは程遠くてもどさくさ紛れに横綱に推挙したかもしれない。この星勘定に加えて14日目の豊昇龍戦が不戦勝だったこともマイナスだ。なし崩し的に横綱になっていたら第二の豊昇龍になる可能性が高かったと思う。審判部は来場所も綱取りとの見解を示しており、2場所連続の優勝同点の12勝で綱取りは少々甘いと思う。同じ優勝同点でも13勝もしくは14勝なら理解するが、12勝程度では敢闘賞ですか?と言いたくなる成績なのだから、あらためて一からスタートでいいのにと思う。その霧島に千秋楽あっさりと体を入れ替えられて敗れた琴櫻は、千秋楽の相撲を見るまでもなく、体の大きさ、重さを活かし切っていない。その上、体は一向に絞られない。中日で4勝4敗となったときはこれから上位戦でもあることだし、関脇陥落はほぼ間違いないと思われたのだが、後半は盛り返して12日目に横綱豊昇龍に勝つなど翌13日目に勝ち越しが決まる。しかし、毎度のことながら勝ち越すとあとは全部負けてしまい、8勝止まりであった。
関脇は4人と豪華だったけど、若隆景が膝の怪我で全休となったのは残念でならない。さらに来場所も休むのではと言われているので、まずは怪我を治すことを優先してほしい。出場した3人のうち、熱海富士と安青錦は優勝争いを演じた。特に熱海富士は地力を付けてきたのがよく分かる。攻めが厳しくなり、速くなった。これが継続できれば大関は近い。先場所関脇で9勝、今場所は同じ関脇で優勝同点の12勝なので、審判部では来場所の成績如何では大関もあり得るとの見解を示した。あらためて安青錦は、あの足の状況でよく堪えて勝てたものだと感心する。元気なころの相撲と遜色がなかった。が、その分かなりの無理をしているだろうし、負荷もかかっているだろう。重ねて言うが、巡業は休んで治療に専念してほしい。残りの琴勝峰は6勝に終わる。3連勝スタートだったのに5連敗するなど波が激しく、勝ち越すことができなかった。今場所は平幕で燻っていた頃の相撲…積極性に欠ける相撲が時折り見られた。西関脇で6勝だったので、よくて西小結、あるいは筆頭辺りに落ちるかもしれない。
小結は義ノ富士6勝、王鵬はなんと2勝とともに負け越して三役を座を譲ることとなる。義ノ富士は両横綱に勝ち、両大関には敗れた。連勝、連敗を繰り返していた。前へ出ているように見えて足が出ておらず、そのせいで土俵際での突き落としや引き落としに敗れる相撲が多かった。何度土俵に這いつくばったことか。でも、前へ出る突進力、圧力は強く、磨きをかけて出直しだ。一方で、王鵬はどうしたのだろう。攻める場面はほとんど見られず、攻めても諦めが早く、一方的に攻められるばかりで、しかも粘りがなく、あっさり土俵を割ることが多かった。見たところサポーターやテーピングはしておらず、怪我をしていたのかどうかは分からない。内臓的なものだとすればなおのこと分からない。が、どこかに不調がないとあの成績は説明がつかない。ただ、2勝目を挙げた14日目の相撲は最後まで攻め抜いたものだったので、ここに光明を見出したい。
つづいて平幕上位。
5枚目までの10人で勝ち越したのは3人。東筆頭・藤ノ川8勝、西3枚目・伯乃富士9勝、東4枚目・大栄翔10勝となっている。負け越した力士は7勝や6勝が多く、2桁敗は東3枚目の平戸海と東5枚目の宇良だけである。それほど実力が拮抗しているということである。平戸海と宇良にしても実力からするとたまたまとしか思えない。負け越した力士たちはほとんどがみんな今場所とほぼ同じような地位に留まるので、引き続き三役を狙える。これは楽しみだ。藤ノ川は横綱2人に勝ち、横綱戦初顔からの連勝を4とした。が、大関2人には敗れている。この点は義ノ富士と同じ。中盤3連敗があり、中日で3勝5敗だったが、後半戦は5勝2敗と白黒逆転で勝ち越した。カチッと型に嵌れば一気に土俵を走って一瞬で勝ってしまう。また思い切りのいい変化で相手にバッタリ手を突かせたり、どちらにせよ、気っ風のいい相撲を取る。先場所は今場所同様両横綱に勝ちながら7勝と負け越していただけに今場所こそはと気合も入っていたことだろう。東筆頭なので、西小結あたりに昇進できるのではないか。伯乃富士は得意の低い姿勢からの前へ出る相撲がよかった。9日目までに7勝2敗と優勝争いに加わるかと思われたが、そこからまさかの4連敗。連敗中はあっさり寄り切られたり、前へ落ちたりだったが、最期の2日は連勝で締めた。大栄翔は突き押しは以前ほどの威力はなく、最後まで突き切らず、いなしやはたきを織り交ぜながら勝つスタイルに変えたようだ。30歳を過ぎ、忍び寄る力の衰えと向き合った結果なのだろう。そんな中、2桁勝ったのは立派だ。この3人が三役に上がるのは間違いなさそうだが、来場所の序列は逆になりそう。すなわち、西関脇・大栄翔、東小結・伯乃富士、西小結・藤ノ川かなと。
中位は東西の7枚目の琴栄峰、高安がともに11勝で敢闘賞受賞。琴栄峰はやわらかさを武器に攻めも速い。終盤上位戦を含め3連敗があったが、11勝は先場所に続く2桁勝利。1年前新入幕だったわけだが、そのときは歯が立たず1場所で十両に戻っていることを考えると大きく成長している。高安はやはり左からの攻めと腰の重さだ。そして、今場所は動きが軽かった。それにベテランらしく勝負のツボを心得ていて、勝負どころを逃さなかった。ともに来場所は上位に上がる。特に琴栄峰は初の上位なので楽しみ。西8枚目の狼雅はまわしを切ったり、いい位置でまわしを引いたりと巧い相撲で9勝。前半は3勝6敗だったが、終盤6連勝で場所を終えた。じっくり相撲を取るイメージなので、上位と対戦することになったら面白そうだ。来場所は少しは上位と当たるかもしれない。東9枚目・藤凌駕は10勝。頭で当たってからの突き押しは相手にとって脅威だ。とにかく休まず攻める。それが藤凌駕の魅力だろう。あと東10枚目の朝乃山は9勝。先場所は7勝したところで休場となり、今場所はその悔しさをバネに怪我無く皆勤、9勝を挙げた。やはり右からの攻めは強烈で、胸を合わせても上手を与えない。そこは元大関、さすがである。気になるのが東8枚目・若元春が6勝、西9枚目・翔猿が5勝と振るわなかった。常に上位にいた力士がこの地位で勝ち越せないのは力が落ちているということなのか?それともどこか悪いのか?若元春は12日目に6勝目を挙げて臨んだ残り3日を全廃してしまった。腰にテーピングをたくさん貼った姿が痛々しかった。そんな状況なので力が入らないのだろう。終盤に疲れが溜まっていたのかもしれない。翔猿も以前の俊敏なイメージとは程遠く、動きが悪い。これでは相手は捕まえやすく、正対しやすい。来場所は十両が見えてくる地位に落ちる。最低何勝などと消極的なことは言わず、2桁を目指せばいい。この地位なら可能だ。
下位は東西の13枚目の錦富士と尊富士の伊勢ケ浜部屋であり、青森県出身者がともに10勝。錦富士は相撲のうまさが光った。尊富士は攻めが厳しく、相手に相撲を取らせない感じだった。錦富士は2に目からの6連勝が効いた。その後もコツコツと白星を重ねて10勝とした。また尊富士は新入幕で優勝したときを彷彿とさせる相撲で12日目で10勝目を挙げると以降は上位戦が組まれ、3連敗と尻切れトンボになってしまったが、速い力強い攻めは見ていて気持ちがいい。西14枚目の獅司は優勝争いにも絡んで10勝。こちらも尊富士と同じで12日目に10勝したものの、同じく終盤に上位戦が組まれ、3連敗したことで10勝で終わる。獅司で感じたのは上位戦で消極的な相撲を取っていたことだ。13日目の琴櫻戦では頭を付けて上手を遠ざける相撲で、防戦一方のイメージだった。翌日の熱海富士戦に至っては立ち合い変化で墓穴を掘って完敗だった。頭を付けてから攻めるのは獅司の一つのスタイルだが、琴櫻戦はそのあとどうしたいのか分からなかった。なので、ちょっと残念だった。新入幕の西15枚目の一意と東16枚目の大青山はそれぞれ5勝と6勝だった。この地位と成績では十両陥落は免れない。ともに持ち味はあまり発揮できなかった。気になるのは東11枚目の若ノ勝と西11枚目・御嶽海だ。若ノ勝は入幕2場所目で、さて今場所はと思っていると、初日から5連勝した。しかし、翌6日目の藤凌駕戦で膝を傷めてしまった。男前だし、いい相撲を取るので楽しみにしていたが、残念でならない。違和感があるのなら来場所は休場でもいい。御嶽海はあの密着しての寄りが見られず、攻められるとあっさり土俵を割ることが多かった。どこか悪いのか、気力がなかったのか。あと、西12枚目の阿炎は7勝だったが、そろそろ危ない水域に入ってきた。まだ腰の痛みは癒えないのだろうか。もろ手突きもあまり効いていなかった感じだ。
ところで、先場所十両に陥落した玉鷲だが、久々の十両の土俵で9勝を挙げた。東7枚目まで落ちているので、9勝では幕内復帰はなさそうなので、来場所10勝して九州で幕内に復帰しましょう。
ということで、最期は大盛り上がりの優勝決定戦でした。来場所は2横綱3大関と番付が豪華になる。番付だけが豪華にならないよう内容も充実した場所にしてほしい。今回はこんなところで。


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