令和4年大相撲九州場所 総括その1

今場所も終わりました。

今はサッカーのワールドカップだろ、と言われそうだけど、そこまで精通していないし、私は4年ごとのこの時期だけ見る人なので、にわかとは言わないまでもミーハーには違いない。まだ結果は出ていないけど、やっぱりなというのが正直な感想。いい状態が続かないのも毎度のこと。知らないくせに偉そうに言うなと怒られそうなので、この辺でやめておく。

相撲に話を戻します。優勝は28年ぶりとなった巴戦を制した西前頭9枚目の阿炎だった。12勝の優勝は立派だ。本割から数えて3連勝での優勝で、これは若いからこそできたのかなと思う。それ以上に今場所は突き押しが冴えていた。よく腕が伸びた。

まぁ、阿炎についてはいろいろあった。変な動画を投稿して注意を受けたかと思うと、コロナの講習会では居眠りをしていたと堂々と言う始末。挙句に協会が出していたコロナ下での外出自粛を破って夜の街へ繰り出したことで3場所出場停止の処分を受けた。これに対して、本人は引退届を出したが、預かりとされ、受理されなかった。ここで腐らず、辛抱、精進したことが今回の優勝につながったのだろう。

私はコロナ前の阿炎はあまり好きではなかった。生活態度だけではなく、相撲も突っ張りはあるものの、飛んだり跳ねたりのバタバタした相撲ぶりで、素質だけで取っていた感じだった。小結を4場所連続で勤めた時期もあったのだが、処分を聞いたとき正直「ざまあみろ」と思ったものだ。

ところが、謹慎が解かれて、去年の春に幕下で場所に復帰すると顔つきが変わっている。以前の人を喰ったような、舐めたような顔ではない。しおらしい、借りてきた猫というより落ち着いているのだ。しかも、相撲は地に足が付いている。突き押しもあれば、変化やいなしもある。これは突き押しを磨いたためだろう。そうでないと、変化やいなしは効いてこない。少なくとも軽くはない。その年の九州で幕内に復帰すると連続12勝で、今年の春には一気に新関脇に昇進した。先場所は肘などの手術のため休場したが、今場所はその影響をあまり感じなかった。とにかく、優勝で天狗にならず、元に戻らず、今のまま進んでいってほしいものである。

では、上から順に見ていこう。

大関は明暗が分かれた。東の貴景勝は優勝こそならなかったものの、優勝同点で横綱不在の穴を埋めて大関の重責を果たした。今場所は前へ出る相撲が目立った。時折り見せるいなしも前へ出るから効果があるというのは阿炎と一緒だ。貴景勝はこのところ、連続して2桁勝利を挙げており、当たり前のことではあるけど、看板力士としての面目も保った。一方、西の正代は場所前の予想通り負け越して御嶽海の後を追うように関脇に陥落することになった。彼もまた来場所10勝できずに大関に復帰することはないだろう。ここで復帰できなければ、二度と大関には戻れないに違いない。それは御嶽海も同じだ。情けないことだけど、上には強い力士がいるべきなので、これでよかったと思う。

関脇はというと、東の若隆景がまったくの期待外れに終わった。序盤は連敗こそしなかったものの、3勝2敗、中盤も3勝2敗とエンジンがかからないまま8勝で終えた。両大関に負けたのは番付上仕方がないにしても、同じ関脇の豊昇龍、御嶽海、小結の玉鷲と3人の役力士と顔が合わなかったにも関わらずこの成績では大関への道はまだまだ険しいと言わざるを得ない。対照的に西の豊昇龍は終盤まで優勝争いに絡んで11勝とした。終盤3連敗があり、これで優勝争いから脱落してしまったので、本人もさぞ悔しかったことだろう。2人に言えることは安定感がまだ足りないということだ。若隆景ははずが強く、前傾姿勢を保っているのだけど、前に落ちなさそうで落ちるし、豊昇龍は足腰がよく、粘り腰があるので投げに頼る相撲が目に付く。その辺を克服できれば大関も見えてくるのではないか。西2枚目の御嶽海はもういいでしょう。元大関として引退までの何年かを過ごすのだろう。それは正代も同じだろう。厳しいことを言っているように思われるかもしれないけど、これまでの相撲ぶりを見ているとやむを得ない。これで元大関は栃ノ心、高安を合わせて4人となる。

小結は4人もいたけど、勝ち越したのは西の霧馬山だけ。勝ち越してから3連敗を喫して8勝止まりだったのは残念だけど、これで連続して三役を維持した。あとの3人は負け越したとはいえ、前場所優勝の東の玉鷲が6勝、東2枚目の翔猿と西2枚目の大栄翔は7勝と大負けした力士はいない。これだけ上位に実力者が揃えば勝ち越すのは容易なことではない。玉鷲は中日まで1勝7敗と振るわなかったが、後半はらしい相撲を取り戻して5勝2敗と盛り返した。翔猿は新三役で両大関撃破しての7勝はよくやったというべきだろう。大栄翔は中盤の失速が痛かった。

ここまででけっこう紙幅を費やしてしまった。平幕まで1つの記事に書いたらとんでもない量になりそうなので、平幕については次回書きます。今回はこんなところで。