令和6年大相撲春場所 まとめ

2024年3月30日

3月24日に幕を閉じた大相撲春場所の話題は尊富士が全部持って行ったといってもいい。なので、今場所ばかりはいつもと構成を変えて書いていきます。

尊富士は新入幕で、さらに東前頭17枚目という幕尻で優勝という快挙をやってのけた。しかも、前日に右足を痛め、本人も師匠も出場を諦めていたところ、今場所途中休場した横綱・照ノ富士に背中を押されて翌千秋楽に出場、誰もが心配する中、西6枚目の豪ノ山との対戦を制して幕内最高優勝を手にした。おまけに三賞まで独占した。これは貴花田、出島に次いで史上3人目だった。16時25分頃に決まった優勝というのも史上最速だったのではないか。

尊富士の相撲でいい点は攻めが速いことだろう。差せばすぐ前に出る印象だ。それに腰が低い。腕の返しもいい。相手が攻めづらい状況を作るのがうまい。ただ気になるのが体が硬そうに見える点。場所前に痛めたという脇腹もずっとテーピングを巻いたままだった。体型が逆三角形なのも安定感でいうとどうなのだろうと思う。今場所は痛めた箇所の治療を優先させて、巡業は休むくらいで臨んでほしい。

続いてその尊富士に最後まで付いていった西5枚目の大の里。千秋楽は西大関の豊昇龍に敗れ、11勝に終わったけど、あの圧力は幕内で何場所もやってきた上位力士と比べても遜色がない。大の里もとにかく前へ出る。特に相手を捕まえてからが速い。あの体格なので相手を押し潰すような、じっくり料理するイメージがある。先場所が新入幕で、このときも11勝だった。まだ髷も結えずザンバラのままだ。そんな2人が優勝を争い、三賞も尊富士には及ばなかったものの敢闘賞、技能賞の2つを獲得。最後まで場所を沸かせた2人だけが三賞を受賞したが、これこそが今場所を象徴していた「画」であろう。

この2人が共通して負けた相手が豊昇龍だった。しかも、同じような取り口だった。簡単に言えば、攻めの速い両者の勢いを利用して回り込むようにして投げを打って勝ったのだ。そして、2人とも十分でないまま寄って出て投げを喰っている。まわしをちゃんと引いた上で寄っていけば、投げられるリスクも減ったのに不用意に出るから投げられる。豊昇龍はあの面構えからも分かるように、もともと負けん気が強い。幕に上がって来たばかりの力士に簡単に負けてなるものかと闘志をむき出しにするのは容易に想像できたけど、その上腰が強く、投げが得意だ。運動神経もいいし、何より俊敏だ。2人は豊昇龍の引き足の速さに負けたといったところか。そこにつられて前へ出て、体を開かれて投げを打たれた。これからの勉強だ。

それにしても、もし尊富士が休場して、大の里が豊昇龍に勝つと決定戦を経ずに大の里の優勝となっていただろう。また、現実のとおり大の里が負けていたら、痛々しい姿の尊富士が表彰式だけ出てくることになったのだろう。それは1989(平成元)年春場所での千代の富士以来の珍事となるところだった。だからといって、昨日の歩けない、車いすで運ばれる様を見る限りではとても出場は叶わないと思っていた。ところが、NHKの相撲中継を点けると「尊富士、場所入りです」と伝えているではないか。正面の解説だった師匠の伊勢ヶ濱(元横綱旭富士)も相当迷ったそうだ。照ノ富士の後押しもあり、悔いの残らないようにと本人が出場を決め、それを了承したというが、勝ててよかった。豪ノ山はいつもの押しではなく、四つを選択した。どちらにせよ、かなりやりづらかったことだろうと思う。

若い2人に紙幅をけっこう費やしてしまったけど、今場所の彼らにはそのくらいの価値があった。では、その他の力士を簡単にみていこう。

照ノ富士は初日に錦木に負け、4日目から3連敗して7日目より休場。いずれも寄り切りで敗れるというこれまででは考えられない負け方であった。どうも腰がよくないようだ。毎場所だましだまし臨んでいるような状況は変わらない。また数場所全休するのだろうか?ここまで来たのだから10回目の優勝は成し遂げてほしいと思う。本人も常々それを口にしているから、そこまではモチベーションは維持できるだろう。で、翌場所引退というのも栃錦や佐田の山のようで潔い。

大関陣はなんといっても東の霧島の不調だろう。大荒れの春場所を象徴しているかのようだった。初日から4連敗し、そのまま持ち直すことなく5勝10敗に終わる。前半は歯車でも狂ったかと思って見ていたけど、後半になるにつれて腕に力が入ってなさそうだったし、土俵際の粘りもないし、どこか悪いのかなと思うようになった。実際のところは分からないけど、来場所は復活することを願っている。西の豊昇龍は次点の11勝だったけど、いつもながら安定感に欠ける。足腰がいいからつい投げに頼る取り口になりがちだ。それが怪我に繋がる。気を付けてほしい。東2枚目の貴景勝は勝ち越した相撲で頸椎を再び痛め、大胸筋も痛めたので、カド番は脱出したものの、これは力士生命に関わるのではないかと心配している。稀勢の里や琴奨菊という例が近年あっただけに気になる。最後に新大関の琴ノ若は10勝。大きくて柔らかい相撲を取って前半は重圧にも耐えながらよくやっていると思ったけど、終盤は尊富士に敗れ、大関同士の星の潰し合いで失速してしまった。来場所は祖父の琴櫻を継ぐだけにさらなる奮起に期待したい。

やはり、番付だけ豪華になっても中身が伴わないと場所が締まらない。大関は東西2人で十分だと思う。ちょっと古いけど、スポーツ総合雑誌の「Number Web」から興味深い記事を見つけたので読んでみてください。

関脇は東・大栄翔が6勝に留まり、三役の座を明け渡すこととなった。西・若元春は9勝と2桁には届かず、物足りない成績に終わった。小結は東・阿炎が9勝で来場所は関脇に復帰できるかもしれない成績。突き押しはよく腕が伸び、らしい相撲が多かった。西・錦木はわずか3勝。初日に照ノ富士に勝って以降、まさかの11連敗。来場所は出直しだ。

平幕は西筆頭の朝乃山が9勝で三役に復帰すると思われる。また、上位で勝ち越したのは東2枚目の熱海富士が8勝、東4枚目・翔猿が8勝、西4枚目・平戸海が9勝、西5枚目の大の里が11勝、西6枚目の豪ノ山が10勝の5人だ。三役は2つは空くので、朝乃山と大の里あたりが入りそうだ。勝手に予想すれば、関脇が東・若元春、西・阿炎、小結は東・大の里、西・朝乃山かなと。熱海富士は先場所東筆頭で6勝だったのが今場所は8勝と力を付けているし、平戸海も初の上位戦で勝ち越すなどじりじりと番付を上げているのが嬉しい。また、負け越しはしたものの、東3枚目の王鵬が7勝と健闘したのも来場所に期待が持てる。

中位は東7枚目の金峰山が首の痛みで途中休場して、再出場後は4連勝するなど追い上げを見せたが、6勝にとどまる。貴景勝と同じく頸椎を痛めながらここまで勝てるのは大したものである。西7枚目の玉鷲が7勝と惜しかった。中日だったか、負けて土俵に落ちた際、足を突くような形になった。膝を気にしていて、以降は膝にサポーターを着けていた。大きなことにならなければいいが。今場所も突き押し、小手投げ、突き落としは健在でもうすぐ40歳とは思えない相撲で土俵を沸かせる。西8枚目の高安は先場所の不本意な土俵とは打って変わって好調。11勝と次点であった。やはり、この地位だと左を差して上手を引けば盤石だ。元大関が並ぶ東西の10枚目の正代と御嶽海はそろって勝ち越した。ともに持ち味を発揮した場所だったと思う。この2人はノビノビ取ったほうがいいようだ。また、西10枚目の佐田の海は今場所も7勝7敗で千秋楽を迎えたが、勝ち越した。

下位は東12枚目の湘南乃海は先場所と同じ人が相撲を取っているのかと思わせるほど別人のような相撲で9勝。来場所は自己最高位くらいまで上り詰めることができるか。東13枚目の錦富士は1場所だけ十両で、すぐ復帰して勝ち越したのは期待しているだけによかった。

で、十両と平幕の入れ替わりを予想してみよう。西12枚目の島津海、西14枚目の北の若、東16枚目の遠藤は十両落ちになっても反論はできない成績だ。3人の入れ替わりなら時疾風(ときはやて)、水戸龍、欧勝馬で落ち着きそう。あと、東6枚目の剣翔は2勝3休10休、東15枚目の妙義龍が6勝と微妙なところで、この辺が十両落ちとなると宝富士と友風も幕内に戻ってこれそうだ。

今回ばかりは尊富士と大の里の2人とその他大勢といった構図になりました。上位陣がふがいないわけだけど、来場所はそんなことのないよう気を引き締めて土俵にあがってほしい。今回はこんなところで。