令和5年大相撲九州場所新番付

2024年3月30日

先場所はまとめを書かずにすみませんでした。新番付が発表されたので、気を取り直して見ていこうと思う。

まず、碧山が十両へ落ちた。これで春日野部屋の幕内力士が56年ぶりに不在となる。前回不在となったのが1967(昭和42)年9月場所で、その前の名古屋場所で幕尻にいた栃東(父)が6勝にとどまり、十両に落ちている。でも、1場所で戻ってくると56年の間、誰かが幕内の地位にいた。私はてっきり横綱栃ノ海の引退、1場所空けて栃東の新入幕かと思っていたけど、栃ノ海は1966(昭和41)年九州で既に引退していた。それにしても、半世紀以上にもおよぶ記録を続けていくことは大変なことだ。幸い若手がいるのだから、また歴史を作ればいい。

横綱は照ノ富士一人は変わらず。今場所も出られるかどうか分からない。毎場所のことながら万全でないなら出ないほうがいい。悪化させては元も子もない。出るなら優勝、無理なら休場、これでいいと思う。

大関陣は東・貴景勝、西・霧島、西2・豊昇龍の3人。これは成績順でこうなっているのだけど、個々にみていこう。

貴景勝は先場所の決定戦での内容もあり、審判部の心象が悪い。が、その一方で横綱審議委員会は次は綱取りと訳の分からないことを言っている。ただでさえ11勝と低次の優勝だった上にあんな形で優勝されたのでは何が横綱だと言いたい。照ノ富士がいつ引退してもおかしくない状況だから、早く誰かを横綱に上げておきたいというのが見え見えである。デモシカ横綱などいらない。その地位にふさわしい力士が出てくるまで何年かかっても空位でいいと思っている。どうしても貴景勝を横綱にしたいのなら先場所のこともあるので、今場所は全勝くらいのハードルを設けないとファンは納得しないだろう。だいたいこれまで4度優勝しているとはいえ、前半にいくつか負けて中盤以降負けずにきて最後は優勝していたというパターンばかりで絶対的な強さで優勝してきたわけではない。そのあたりを横審はどう考えているのだろうか。

霧島はカド番の先場所、勝ち越したものの9勝で2桁には届かなかった。取りこぼしが多いように感じる。それと安易に勝ちにいこうとしていないか。普通に取れば勝てる相手なのに地位に委縮しているのか?大関になるとたいていそうなる。そうならない力士が綱を張れる。

豊昇龍は新大関だった先場所は千秋楽にやっと勝ち越しを決めた。序盤から硬さが目立ち、自分の相撲が全く取れていなかった。下位の好調力士と上位との対戦が組まれたため、関脇・大栄翔との割が崩された。勝ち越したのはそれが幸いした面もあるのかもしれない。

2人にはまずはコンスタントに2桁は勝ってほしいと思う。とりあえずはそこを目指しましょうか(棒読み)。なんだか関脇のドングリが大関のそれに代わっただけのような気がしないでもない。いや、関脇も未だドングリのままだ。大関関脇総ドングリだ。

その関脇の顔触れは先場所と変わらず、東・大栄翔、西・若元春、東2琴ノ若の3人で序列も同じ。大栄翔は10勝したけど、あとの2人は9勝止まり。3人ともに言えることだけど、これまた取りこぼしが多い。だからこそこの成績なのだろうけど、2桁またはそれ以上勝つには前半の取りこぼしを極力減らさないといけない。今は怪我で幕下まで落ちている若隆景は7場所連続で関脇にいて2桁勝ったのは2場所、それも3場所に1度のペースだった。前半よく負けていた印象がある。ここからどうやって抜け出すかが次の大関を狙う上での課題だろう。

小結は東・阿炎、西・北勝富士の突き押し得意の2人。でも、突き押し得意ながら阿炎は引き技があり、北勝富士は四つでも取れるといった具合にともに相撲に幅があり、また対照的でなかなか興味深い。よく関脇が強い場所は面白いといわれるけど、小結だって強ければ面白い。が、そうなると代わりに横綱大関が叩かれる。もっとも、ここ数年の大関の体たらくを見ていると、勝ってもあまり嬉しくないのではないか。阿炎などこの地位でも2桁くらい勝てそうな雰囲気があるから楽しみだ。

続いて平幕。

上位では東の筆頭に朝乃山が戻ってきた。先場所は西2枚目で9勝したのに1枚半しか上がらず久しぶりの三役はならなかった。今場所頑張ってと思ったら巡業中に左足を怪我してしまった。名古屋場所中にも左腕を痛めているだけに状態が心配だ。もう30歳が近く、そんな中での怪我の頻発なので、再大関といってもかなり厳しいのではないか。

他の平幕上位は土俵を沸かせそうな面々が並ぶ。西筆頭・宇良、西2枚目・明生、小結から落ちたものの、西3枚目・翔猿、東4枚目・豪ノ山、これも小結から落ちた西4枚目・錦木、東西の5枚目・阿武咲と翠富士…ただでは済まないような顔触れで横綱以下三役陣も戦々恐々だろう。

中位は若手とベテランが半々といった感じで世代交代が進むのか、ベテランが踏みとどまるのか。東6枚目・湘南乃海、東西の7枚目・北青鵬、金峰山、西8枚目・熱海富士が切磋琢磨して競ってほしい。以前から指摘している北青鵬の相撲は先場所は多少改善されたように見えたが、下位で通用した相撲が中位では通用しないということはよくあることで、実際名古屋で東6枚目の地位で5勝止まり、金峰山も夏に東5枚目で4勝しかできなかった。再挑戦の今場所はどうだろう。熱海富士は自己最高位なのでいっそう壁を感じるかもしれない。

下位は何といっても4人の新入幕力士だろう。東西15枚目・東白龍、美ノ海、東16枚目・狼雅、東17枚目・北の若だ。東白龍は十両で3年足踏み、美ノ海は十両までは比較的順調だったけど、十両で4年近く足踏み、狼雅は序の口から三段目まで一場所で通過したのに幕下で3年もとどまっていた。北の若は22歳と若いが、初土俵から新十両まで4年近く、入幕にさらに2年要している。4人ともずっと前から名前を聞いているからようやく上がってきた感が強い。この4人に加えて再入幕も東西14枚目・友風と一山本の2人。このうち、友風は5年ぶりの幕内復帰だ。2018(平成30)年九州で怪我をして3日目から休場、翌場所から1年間全休で序二段まで落ちて、2年半かけて戻ってきた。一山本も浮き沈みが激しく、怪我も多い。6人とも苦労を重ねての新入幕だったり再入幕なので勝ち越しを目指して頑張ってほしい。

ただ、心配なのは西12枚目・玉鷲と東13枚目・宝富士の両ベテランだ。5勝では幕内が維持できるか微妙な地位だけに奮起してもらいたい。特に玉鷲の先場所の大負け(西3枚目で2勝13敗)は気になる。

今場所も話題に事欠かない番付となった。そして、また誰が優勝するか分からない場所となりそうだ。毎度のことながら軸となる力士が見当たらない。照ノ富士が出るとしても不安のほうが強いからだ。優勝予想などできっこない。なので、どうせ当たらない予想などせずにテレビ桟敷で応援しようと思う。今回はこんなところで。