令和5年大相撲春場所新番付

2023年3月1日

3月12日から大相撲春場所が始まる。初場所が終わってもうひと月も経つのかと思う。では、さっそく見ていこう。

やはり、最初に触れておかなくてはならないのは朝乃山だろう。先場所14勝1敗の好成績で十両優勝したことから十両を一場所で通過して幕内復帰かと期待されたが、残念ながら東十両筆頭とあと半枚足りなかった。再十両は西12枚目だったので、全勝なら幕内だろうけど、それ以下なら難しいと言われていた。13点の勝ち越しなので、単純にいけば再入幕は可能な成績だったけど、他の力士との兼ね合いで十両に留め置かれた。4人も入れ替えあったから下位の朝乃山は厳しかった。でも、今場所は勝ち越せばよほどのことがない限り夏場所に幕内に復帰できるのだから頑張ってほしいものだ。十両連覇でもして戻ってきてくれると今後一層期待が膨らむ。時折見せる甘い相撲さえなければ大丈夫だろう。

横綱と大関は変わらず。東横綱大関・照ノ富士は今場所も休場でいいと思う。ただし、しっかり休んで次に出てくるときは盤石の照ノ富士でないとみんな納得しないだろうから、ふがいない相撲を取るようだと引退しかない。最低でも10勝はしないと苦しくなる。それは今場所なのか、来場所以降なのか。

先場所優勝の西大関・貴景勝は綱獲り場所だ。突き押しが冴え、投げ技も出るなど内容は悪くなかった。優勝した翌場所だから綱獲り場所となるのはそうなのだけど、12勝の低レベルな優勝だけに今場所は14勝か全勝レベルの優勝でないと同じ程度の優勝では横綱に上げるとなっても賛否両論が起きるだろう。

関脇は今場所は3人。東・若隆景、西・豊昇龍、東2・霧馬山となった。足腰のいいタイプのよく似た力士が並んだ。霧馬山は先場所小結で優勝次点の11勝を挙げて初の関脇だ。低い姿勢で拝みながら前へ出る相撲は基本に忠実な取り口だ。一方、先輩の若隆景は新関脇で初優勝したのが1年前の春場所で、以来ずっと関脇にいるものの、なかなか殻を破ることができない。負け越しはないけど、連続2桁勝利がない。また、豊昇龍は関脇3場所目の先場所、連続2桁勝利を目指していたが、場所中に足首を痛めてかろうじて8勝。どうももやもやする両力士だ。関脇が強い場所は面白いという。そうなってほしい。

小結は今場所も4人。東・若元春、西・琴ノ若、東2・大栄翔、西2・翔猿で実力者揃いだ。大栄翔と翔猿は再小結だ。若元春はおっつけが強烈、琴ノ若は攻めが厳しくなった、大栄翔は気持ちのいい突き押し、翔猿は予測不能な相撲とそれぞれタイプが異なり、見ていて飽きない。みんなが持ち味を出せば、場所は盛り上がること間違いなしだ。

つづいて平幕上位。注目は東筆頭・玉鷲、西2枚目・竜電、東4枚目・阿武咲、東5枚目・琴勝峰あたりか。たくさんいますね。大ベテランの玉鷲はよくこの年齢で上位を保てるなと感心するばかりだし、他の力士は久々の上位でどれだけ実力が発揮できるか楽しみだ。大関から陥落して西関脇2だった正代は、御嶽海の後を追うかのように西筆頭と平幕に落ちた。同類相哀れむというか、傷を舐めあうというかそんな風に見えてならない。共通しているのは大関に戻る気はなさそうな点だ。

中位は東8枚目・一山本、西9枚目・平戸海が自己最高位に上がってきた。一山本は阿炎にも似た長い手足を使った突っ張りが魅力的だ。一方の平戸海は右からの攻めがうまい。西10枚目・相撲巧者の錦富士はまた上に戻ってきてほしい。この地位は今場所はベテランが多い。彼らのいぶし銀の相撲にも期待だ。特に西7枚目の高安には奮起を促したい。大関は無理でも今の本命不在の状況なら優勝は狙えるだろう。

下位は冒頭でも書いたとおり、新入幕3人、再入幕1人の計4人も入幕してきた。東13枚目・大翔鵬が再入幕、東14枚目・金峰山、西14枚目・武将山、東・15枚目・北青鵬の3人が新入幕となっていて、久しぶりにフレッシュな番付となっている。大翔鵬は3年半ぶりの幕内でずいぶん久しぶり。しかも、そのときの在位は5場所と短い。今回は長くいられるだろうか。あとの3人は十両の相撲を見ていないので、よく分からない。やっぱり15時台の相撲も見るべきだと思う。

あと、東11枚目の東龍は先場所、テレビで幕内10場所目にして初の勝ち越しなるかとさんざん言われていたからご存じの方もおられるかと思うけど、無事9勝を挙げてこの地位まで上がってきた。他には先場所東16枚目まで落ちていた宝富士が8勝と勝ち越して、西12枚目まで番付を戻した。好きな力士の一人なので、幕に残れてよかったと思う。でも、大負けすると十両に落ちる地位には変わりないので、ウカウカできない。頑張ってほしいのが西15枚目の王鵬だ。九州場所で2桁勝って、いよいよ覚醒かと思っていたら先場所は初日から6連敗、一つ勝ってまた5連敗とさんざんで、終盤に九州場所を思い出したのかいい相撲で3連勝したものの、時すでに遅し4勝に終わった。とにかくいいときの相撲を常に出すようにしてほしい。そうすれば、成績はおのずと付いてくる。

長々と書きましたが、今場所もあと半月を切った。ベテランから若手までまことに話題に事欠かない。が、今場所も誰が優勝するか分からない。番付上では貴景勝が軸になるはずだけど、軸というには頼りない。照ノ富士は不透明だし、関脇以下はドングリの背比べだ。序盤で貴景勝の綱獲りの話が消えるようだと混沌として優勝など予想もできない。そろそろ誰かでんと構えてほしいものだけど、それはここ数年照ノ富士が担ってきた。が、最近はそれもできなくなりつつある。そういう力士の出現を期待しつつ、終わりにしたいと思います。

今回はこんなところで。