四国小回り その４
引田を出た列車はのどかな田園風景を見ながら讃岐相生に停車する。香川県最後の駅だ。
周りは田んぼと何軒かの民家があるだけ。駅前をまっすぐ行くと国道11号があり、瀬戸内海に出る。
これから列車は海岸沿いを避け、大阪峠を越える。志度から造田にかけてはうまく天野峠と羽立（はりゅう）峠をかわしていたけど、ここはそうはいかなかった。それまで平坦なところを走っていた列車はここから最大25‰の急勾配に入る。駅では同じ高さだった田んぼが発車わずか２分弱で見下ろしている。その向こうに見えるのは瀬戸内海だ。店が見える辺りに国道11号が走っている。
トンネルは長短合わせて11個もあり、３つ目の短いトンネルが県境だ。最後、11個目の大坂山トンネルが一番長い（989メートル）ので、そちらかと思いがちだけど、実はずいぶん手前のかわいらしいトンネルで県を跨いでいる。途中、右へ大きくカーブして南へ進路を変えて板野方面へと下りていく。
峠を下りるとまた田園風景に戻る。
阿波大宮の構内に入る。今は島式のみの１面２線となっているけど、かつては左端にホームが残っているように２面３線の駅であったことが分かる。
秘境駅とも言われる阿波大宮。徳島県最初の駅だ。５年ほど前に目黒君と車で訪れたことがある。それは車で県道1号で峠に挑もうというものであった。大坂峠のサミットには展望台があり、そこからの瀬戸内海を見てみたいという目的もあった。が、あいにくの雨で瀬戸内海はくすんで見えた。このときは徳島側から上ったのだけど、その前に立ち寄ったのがこの阿波大宮駅だった。峠越えはなんとも大変なもので、これが鉄道になり、さらに海沿いに道路を通してアクセスが楽になった。でも、この鈍行のえっちらおっちら感がいい。
谷になったところを走り、大坂谷川に沿い、さらに下って板野に着く。国鉄時代は鍛冶屋原線というローカル線があったが、50年以上前の昭和47年に廃止されている。6.9キロの短い路線だったので、廃線歩きをしてみてもいい。２番線に停車しているのは弊ブログのヘッダー画像にもしている５両編成の特急「うずしお４号」高松行きだ。
「うずしお」が去った後に３番線に残っているのは徳島を先発していた高松行き普通列車。平日はキハ40や47が使われている列車だけど、土日祝日はこうして1500形が運用に就いている。
７時27分、板東着。ここは四国霊場八十八箇所一番札所・霊山寺の最寄りだ。この写真では分かりづらいけど、中間駅にしては比較的大きめの駅舎だ。よく見ると改札がない。
また、大麻比古神社も近いということで、ホームには赤い鳥居が建てられている。写真は２番線のもので、駅舎側の１番線にも鳥居はある。大麻比古神社は阿波国の一宮であり、県内一の大社でもあることから正月には大勢の参拝客で賑わう。駅舎が大きいのはこのためだろう。
列車は歩を進めて池谷に着く。池谷の路線図は上から見ると「人」のような形になっていて、向こうに見えるのは鳴門線のホームと線路で、高徳線は手前の今通っているところである。その分かれたところに挟まれるような場所に駅舎が造られたので、列車の窓から撮ったのにご覧のようにこちらを向いている。
中庭はよく手入れされている。池に水が張られていないのは無人駅だからだろう。向こうに見える鳴門線ホームには何も来なかったけど、高徳線ホームは上り板野行きが既に到着して我が列車を待っていた。
池谷を出るとしばらくレンコン畑を左右に見る。
勝瑞（しょうずい）を出ると、左手奥に眉山が見えてきた。この山が見えてくると徳島も近い。
そして、吉野川を渡る。河口近くとはいえ、この川幅。香川県民からすると羨ましい限りだ。
右から徳島線のレールが近づいてきて佐古に着く。１面２線のホームの反対側に普通列車が停まっている。が、徳島へ向けてすぐ発車した。走り去る姿を見るとなんと右側通行だ。これは徳島線の穴吹発徳島行きで、７時44分発となっている。一方、こちらは７時45分に出て左側の線路を走っている。普通、２分は空けないと次の列車は発車することはできないけど、別々の線路を走るので問題はない。この一見複線に見える佐古－徳島間は単線並列区間となっていて、それぞれが独自の単線を持っているのだ。だから、もう少しずれていれば、お互いが同じ方向へ向かって走るシーンが見られたわけだ。
そして７時47分、高松から所要２時間７分で徳島に着いた。ときどき長い停車時間があったので、途中の駅でも楽しめた。側線寄りの４番線に入線したので、たくさんの車両を一度に見られる。佐古で先行した徳島行きは１番線に入っている。
今回はこんなところで。