令和8年大相撲春場所 まとめ
3月22日、大相撲春場所は東関脇霧島の3回目の優勝で幕を閉じた。ここ数場所は体がよく動いていた。前の大関に上がる前の頃のようにうまさと力強さが目についた。が、14日目に優勝争いを演じていた1敗霧島、3敗豊昇龍、琴勝峰の3人とも敗れて優勝が決まり、さらに千秋楽もいいところなく琴櫻に屈して12勝3敗と尻すぼみに終わってしまう。ただ、優勝したのが評価されて、場所後の大関復帰が確実となった。復帰となれば、およそ2年ぶりで、現行制度の陥落翌場所に10勝すれば復帰できる特例を除いた、間が空いた場合では魁傑、照ノ富士に続いて3人目となる。つまり、もう一度3場所33勝(目安)を成し遂げなければならないから簡単なことではない。来場所は30歳になっているので怪我だけには気を付けて精進してほしい。
横綱は今場所も精彩を欠いた。豊昇龍はまたしても優勝を逃す。なんといっても12日目の対霧島戦で敗れて引きずり下ろすことができなかった。上手を簡単に引かれ、終始その上手からの攻めを受け、防戦一方になり、反攻できない完敗であった。今場所は勝った相撲も危なっかしいものが何番かあり、それは苦笑いしている豊昇龍の表情を見れば分かる。相変わらず安定感に欠けた相撲を取っている。投げをよく打つが、攻め込まれた勢いを利用したものが多く、千代の富士や白鵬のような組み止めての上手投げというのではない。だから、見ていて安心できない。これではいつまで経っても優勝できない。
一方の大の里はやはり怪我が完治しないと十分な相撲は取れない。前へ出る圧力が弱い、だから攻め切れない、挙句に引く、の悪循環で今場所一つも勝てずに休場に追い込まれた。以前、私は大の里は修正能力が高いと書いた。たとえ、今場所はもうひとつでも次の場所ではその点を修正して成績をよくするといった力士なので、あまり心配していなかったが、怪我を抱えていてはそうもいくまい。横綱なのだから一度全休でもしてじっくり治してから出てきてほしい。
大関は安青錦がまさかの7勝で綱取りの失敗どころか来場所はカド番になってしまった。プレッシャーもあったのだろう。とにかく上体を起こされて敗れる相撲が多かった。相手もいつまでも同じ手は喰うわけにはいかないから研究を重ねてきた結果だと思う。安青錦について場所前のインタビューが気になった。今までこのスタイルで相撲を取ってきたので、何かを足したり覚えたりせずにこれを伸ばしていきたいという意味のことを言っていた。これを聞いて、ここ数場所私だけではなく、多くの人が指摘してきた前へどんどん出る大の里や義ノ富士、王鵬といった苦手力士への対策や克服はしなくていいのか、していないのかと思った。克服はすぐにはできなくても対策くらいはできるだろう。が、今場所の相撲を見る限り、対策はできていなかった。それどころか美ノ海のような前さばきのいい力士にも敗れるなど全体にバラバラであった。安定感があるのは誰もが認めるところではあるけど、自身の圧力を強めることを考えないと同じ轍を踏むことになる。まぁ、入門以来勝ち越しを続け、入幕以来2桁勝利を重ねてきた安青錦も人間だったということか。ともあれ、出直しだ。
もう一人の大関琴櫻は初日から3連勝スタートしたのに3連敗と相変わらずのバタバタぶり。体格を活かした攻めを見せたかと思うと一方的に寄り切られたりと前半戦が終わって4勝4敗。またハチナナかと思ったら、後半戦は盛り返して14日目に横綱豊昇龍、千秋楽に関脇霧島を破って13日目に安青錦に敗れただけの6勝1敗として、10勝で終わった。大関として10勝というのは及第点ではあるけど、琴櫻の2桁勝利は優勝した一昨年の九州以来8場所ぶりのこと。後半戦の相撲が15日間続けられればもっと勝ち星を伸ばせるのに、優勝だってできるのにと思うほどだ。踏み込み、圧力が強かった。それによく攻めていた。ただ、取ってみなれば分からないのが琴櫻なので、来場所以降も覚えているかどうか。でも、優勝したときはこんな相撲ばかりだったんですがね。
横綱はもちろん、大関も強いと場所は締まる。
次は三役。
関脇は東の霧島は差し身がよく攻めが速く、力強さがあった。基本的には寄りや投げで勝つが、体がよく動くので引き落としや突き落としでも勝って11連勝した。最後は連敗して12勝に留まったけど、来場所の大関復帰が確実となった。西の高安は中盤から終盤にかけてまさかの中日からの7連敗で7勝に終わる。前半の6勝1敗からの暗転。何日目か腰を傷めたような感じで、そこから精彩を欠いた相撲になった。千秋楽に勝って7勝になったことで三役に残れそう。
小結は東の若元春が右のふくらはぎを傷めて3勝しかできなかった。おっつけからの攻めも攻め込まれての守りも踏ん張ることができないから、これでは相撲にならない。怪我を治すことが第一だ。治れば、若元春のことだからすぐ戻って来られるだろう。対照的に西の新三役・熱海富士が9勝を挙げた。右四つの攻めが厳しく、圧力が強かった。土俵際での詰めの甘さも見られなかった。2桁は勝てなかったけど、大の里と両大関に勝つなど先場所2度目の決定戦に出たことはフロックではないことを示した。
平幕を見ていこう。
まず、東筆頭の若隆景。右肘を傷めながら土俵に上がり、前半は3勝5敗だったが、以降は5連勝で勝ち越した。低い体勢からの攻めは厳しく、粘りもすごかったが、肘は悲鳴を上げていた。取組が終わるたびに肘を押さえて痛がる姿は悲壮感が漂っていた。そんな中でも勝ち越したのは立派で、それで休場に踏み切ったのだと思う。大の里、琴櫻に勝っているのも評価できる。東2枚目の藤ノ川は千秋楽に勝ち越しを決めた。両横綱、両小結に勝つなどしたものの、なかなか勝ち星は伸ばせなかった。それでも初日から連日の役力士との対戦を4勝4敗の五分で乗り切ったのは大きい。千秋楽の王鵬との7勝7敗同士の一番ではもろ差しになったものの、王鵬の攻めをしのいで最後はすくい投げで勝つなど真っ向勝負は変わらない。で、技能賞を獲得した。西5枚目の琴勝峰は優勝次点の11勝を挙げた。優勝した去年の名古屋のときのような積極的な相撲で星を伸ばしたのはよかった。柔らかさを活かした攻める相撲は入幕時からこれは上へいけると思ったものだが、伸び悩み、琴櫻に先を越され、三役にも昇進したことがない。優勝して以降も負け越しが続いていただけにようやく目覚めつつあるのかなと思う。敢闘賞を獲得したが、さらに上を目指してほしい。
と、このあたりが次の三役に上がれそうな面々なのだが、どうなるだろう。関脇は東西ともに空きそうで、その一方に西小結で9勝した熱海富士が上がりそう。西関脇高安は7勝だったので小結に落ちると思われる。となると、関脇小結にそれぞれ1つ空席がある。途中休場をしたとはいえ、東筆頭で8勝した若隆景は西小結あたりに落ち着きそう。となると、琴勝峰が初の三役で関脇くらいになるのか?東2枚目で8勝の藤ノ川は来場所はどちらかの筆頭どまりになるのではないか。
この地位では7勝がたいへん多かった。西筆頭義ノ富士、東西の3枚目平戸海と王鵬、東4枚目の大栄翔と4人もいる。さぞ悔しかっただろう。が、ということは、この4人は来場所も同じような地位に留まるということでもある。来場所こそは勝ち越してほしいものだ。東5枚目の阿炎は場所前から腰を傷めていたこともあり、初日から連敗して休場したが、途中出場して4勝を挙げて幕内には残れそうだ。休んだのがいい方向へ向かったようだ。来場所に期待だ。
中位は先場所上位の壁に跳ね返された一山本が9勝した。勝った内容はほぼ寄り切りと押し出しとよく攻めたし、よく体が動いていた。長い手足を存分に活かした懐の深い相撲で昔の阿炎を思い出した。西8枚目の正代は琴勝峰を圧倒する相撲を見せたり、好調かと思わせたが、そこで7勝してから4連敗。千秋楽にかろうじて勝ち越し。正代らしいといえば正代らしい。東10枚目の豪ノ山は電車道の相撲が多かった。当たってからの攻めが速く、圧力も強かった。が、終盤役力士との対戦が続き、4連敗して郵送争いから脱落。それでも千秋楽に勝って10勝に到達した。こんなところで燻っているような力士ではないので早く上位に戻ってきてほしい。
ここでちょっと気になるのが西10枚目の玉鷲だ。序盤はよく前へ出ていたように見えたのだが、4連敗スタート。以後は勝ったり負けたりで結局5勝10敗。それだけにこの4連敗が痛かった。いつもどおり、のど輪や小手投げなど出ていたけど、威力が弱く、攻めきれなかった。ちょっと衰えがきているのかなと感じた今場所であった。この地位で5勝なので十両に落ちることはないけど、来場所も同じ成績なら十両に落ちかねないので、奮起を期待したい。
下位は14人中10人が勝ち越している。東12枚目の朝紅龍はご当所で9勝。真っ向勝負もあれば、いきなりの変化もある。ただ、いずれにせよ思い切りがいい。だから、変化も決まる。小さい体ながら筋肉質で、先代の霧島を思わせるが、体はもっと小さい。やはり、低い姿勢からの押しがあるからだろう。負けん気の強さも原動力となっている。気っ風のいい相撲で見ていて面白い。西13枚目の藤青雲は新入幕で10勝して敢闘賞を受賞した。右四つからの寄りは巧く、小技も効く。安定感がありそうで、早く力を付けて上位に上がってほしい楽しみな力士だ。東14枚目の千代翔馬が場所中腰を傷めながら休まず、しかも10勝を挙げたのは立派だ。懐の深さから繰り出す投げは健在で、終盤5連勝した。ベテランの域に達しているが、まだまだ活躍しそうだ。西14枚目の錦富士は中盤黒星先行となったが、終盤厳しい攻めを見せた。最後は4連勝で9勝とした。これで青森県出身の幕内力士の在位記録は来場所も更新される。ただ、一人では心許ないので、早く尊富士に戻ってきてほしい。東16枚目の朝白龍は入幕2場所目で10勝。地味ながら巧い相撲で難敵を破っている。あと、幕尻西17枚目の琴栄峰は新入幕の昨年名古屋以来久々の幕内で9勝を挙げて勝ち越した。いい攻めを見せていた。足が高く上がる四股で人気だが、兄の琴勝峰ともどもいいものを持っているので、伸ばしていってほしい。
こんな感じでしょうか。両横綱と安青錦の復調、再大関霧島の相撲、空いた三役には誰が座るか?平幕上位はどんな顔触れになるのかなど来場所は話題が多そうで、終わったばかりなのに楽しみだ。
新番付は4月27日。あっという間にやって来る。今回はこんなところで。





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